Die道示・霙子のおそろしく先の読めない1day

人生

第1話 新生活のスタート、そして所持金20万と少し




 今日から新学期、新生活のスタートだ。


 そんなキャッチフレーズの似合う麗らかな春の空の下――


 誰がどう見てもおんぼろなアパートの一室から、さも場違いな美少女が姿を現した。


 その名前はDie道示だいどうじ霙子みぞれこ――どこからどう見ても良家のお嬢様としか思えない容姿をした美少女だ。


 霙子は自宅のドアにカギをかけながら、目覚ましのアラームを止めた時にはなかったはずのスマホの留守電メッセージを確認する。


『メッセージが 一件 録音されています』


『霙子、パパだ』


 パパからのメッセージだった。


『霙子、パパはひとさまに顔向けできないことをしてしまった。今や大手を振ってお天道様の下を歩けない身分になってしまったのだ。この事実はすぐネットニュースになるだろう。そのため、パパはしばらく身を隠すことにした。

 お前は私の隠し子だから影響はないだろうが、念のため、お前の身辺を警護するためのボディーガードを雇っておいた。

 あぁそれから、私に関連した口座は今朝にでも凍結されるかもしれない。なるはやでコンビニATMに駆け込み、直近の生活費を下しておくんだ。

 ……時間がない。また笑顔で会える日を楽しみに待っている』


「――――」


 霙子は絶句した。


 数秒のフリーズを経て、霙子は駆け出した。近くのコンビニに猛ダッシュする。そしてATMで限度額いっぱいを引き出した。20万である。口座にはまだまだ大金がある。しかし、そこで口座が凍結された。結局、引き出せたのは20万だけだった。


「…………」


 霙子はしかし、ほっと胸をなでおろした。間一髪、危機一髪だった。20万でも、ないよりはマシである。


 それから霙子は考えた。自分の口座を作り、家賃等をはじめとした各種生活費の引き落とし先を変更しなければならない。そうしなければ電気が止まる。ガスが止まる。喫緊の問題ではないにしろ、近いうちに名義人を変更しなければならない。


 霙子は札束を鞄に忍ばせ、コンビニを後にする。


 霙子の一日はまだ、始まったばかりだった。



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