「一発屋のキキ」とロストプラネット

なつきコイン

「一発屋のキキ」とロストプラネット

 一攫千金を夢見る宇宙船「コメット三号」のキャプテン「キキ」は、搭載型アシスタントAI「トト」と今日も宇宙を駆け巡る。

 今回のターゲットは、セクション4カノープス星系にあるといわれている「ロストプラネット」と、そこにある「最終兵器」だ。

 かつて、ヒトが移住したが、何らかの理由で放棄され、忘れられた惑星ロストプラネット、キキはそれを見つけて今回こそ巨万の富を得ることができるのか。

 そして、最終兵器とはどんなものなのか。



「キャプテン、惑星の周囲に障害物なし。周回軌道に入りました」

「ステーションや宇宙船どころか人工衛星も見当たらないっと。よしよし。ありがとうトト、このまま周回を続けて地上の様子を調査して」


「了解しました。しかし、本当にロストプラネットが存在したとは、驚きです」

「フフーン。だから言ったでしょ、今回は確実な情報だって」


「怪しい詐欺師もたまには役立つ情報を持ってくるのですね」

「怪しい詐欺師だなんて、彼に失礼よ。今回もこんなお宝情報をたった百万Gで教えてくれたのよ。とても親切な人だわ」


「真偽のわからない情報に百万Gも出したのですか。まったくキャプテンは……。まあ、今回は当たりみたいですが」

「さて、あとは最終兵器とやらを見つければ、全てはあたしのものよ」


「ちょっと待ってください。最終兵器とは何のことですか」

「あれ、言ってなかったかしら。ここに銀河を支配できるほどの最終兵器が眠っているらしいのよ」


「聞いてませんよ。そんな危険なものがあるのに迂闊に近付いたらまずいじゃないですか。もし、住民がまだ居て、それで攻撃されたらどうするんです」

「忘れられたロストプラネットよ。惑星の衛星軌道上には人工物は見当たらないし、あるのは遺跡だけでもう住民なんて住んでないわよ」


「そんなこと地上の調査が終わるまでわからない……。キャプテン、地上にヒトの生命反応。多数の構築物を確認。明らかに、今も人が住む都市のようです」

「えー! どうするのよ。住民が居たらこの星の物を勝手に持っていくわけにはいかないじゃない」


「そうですね。それをしたらただの泥棒です」

「……帰るわよ!」


「え? 詳しく調査しなくていいんですか」

「そんなことしてどうするのよ」


「ロストプラネットの情報なら高く売れますよ」

「そんなことしたらこの星の住民はどうなるのよ」


「他の星と交易が盛んになり豊かになるのでは?」

「はあー。人工衛星も上げられない文明レベルで、他の星にその存在を知られたら侵略されて滅ぼされるのが落ちよ」


「滅ぼされるというのは極端ですが、不平等な取引を強要される可能性は否定できませんね」

「とにかく、ろくなことにはならないってこと」


「では、このことはギルドに報告しないのですか」

「あたしたちはガセネタを掴まされて何も発見出来なかった。以上よ」


「二人だけの秘密ですね」

「なにロマンスぽく言ってんのよ。さっさと周回軌道を離脱して近場のドックに向かうわよ」


「了解、第2857ドックに向かいます。また、骨折り損のくたびれもうけでしたね」

「なんだと!」


「でも、自分の利益より住民を心配するキャプテンのことを私は敬愛します」

「だから、ロマンスはいらないって。あーあ。今夜はやけ酒だ」



 キキたちは知らなかった。

 その頃、この惑星から持ち出された最終兵器により、とある惑星の艦隊が全滅し、その衛星が木っ端微塵に吹き飛ばされていたことを。


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