仲の良い(かった)友達との性能差を勝手にわからされてる少年はかわいい

 種まきが終わったら、枯れないようにお水をあげようね(╹◡╹)


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 まるで意識を失っていたかのように時はグンッと飛び、中学生である。14歳なんですけど!しりつの…中学?に通ってるんですけど!

 ちょうど定義的ロリギリギリの年齢だね。来年からは脱法ロリを名乗れるようになるのか。誤差だろ。


 私がロリか否かについては正直なところどうでも良くて、大事なのは私立の中学に通っているというところ。パパ上が頑張って稼いできてくれることと、あと私の知識量が肉体的同年代の皆さんと比較すればずば抜けて優れていることのおかげで、私は見事に有名私立中学の特待生さんだ。学費は免除だから、パパ上の稼ぎあんまり関係ないね。


 わざわざ特待生を取ってまで私立中学に通っているのは、私の目標のためである。どこかしらとがった子供や、比較的優秀な子供を集めている場所があれば、少しはキラキラな才能に出会える確率も上がるからね。


 私のような凡人が入れている時点で期待値はたかがしれているのだが、それでも15で才児を名乗れるくらいにはまだリードがある。せっかくの高い下駄が擦り切れない内に見つけるべきものを見つけておきたいが、出会いは偶然と運命だからね。多少探したくらいで簡単に見つかるのなら、アイドルのスカウトは困らないだろう。


 それでも、私のような夢を追い求める人は探さずにはいられないのである。キラキラ輝く未来の光、世界にハッピーを撒き散らす素敵な一人。そういう人に出会うには、少しづつ確率を上げていくしかないのだ。トライアンドエラーの繰り返し。努力では試行回数は増やせなくても、可能性は増やせるからね。色々なところを旅してやたらめったら人に会うのもなしではないが、そのやり方ではせっかく見つけた星をこぼしてしまうかもしれない。


 そんな、私が量よりも質を重視するたちなのはともかくとして、立派な中学生になった私は小学生の時よりも際立って美少女である。例によって欠片ほども見当たらないパパ上の要素はさておき、ママ様の娘なのだから当然だ。……本当に娘か?テロメアが短いんだ、生まれつき。とか言うことになるのは嫌だぞ。


 まあ、私がママ様の下位互換になるのは当たり前のものとして、お勉強を頑張った私に影響されて、同じ学校に入った愉快なお友達を紹介しよう。一人目は智洋くんで、私のお隣さん、もう立派な幼なじみだね。この子が私と同じ学校に通うために頑張った話は、まああまり需要がないだろうから置いておく。どちらかと言うと、頑張っているのは智洋くん自身よりもお金を稼いだお隣パパかもね。どうせ受からないだろうとタカをくくっていた息子の受験が成功してしまったせいで、学費のためにたくさん残業しているらしい。大変だね。


 そんなことはつゆ知らず、私のマンツーマンレッスンのおかげで見事合格して見せた智洋くんはとても嬉しそうにしていた。自分が何の犠牲の上に立っているかも知らない笑顔はかわいいね。その辺を知らせて罪悪感を覚えることがないようにしているお隣の両親は、きっと素敵な親なのだろう。うちのママ様には劣るがね。



 さて、愉快なお友達二号は聡くんである。私とは異なり天然モノで優秀な彼は、私と同様奨学生として同じ学校に通っているのだ。まだ行く先が定かではないものの、その能力を生かせれば何かしらのジャンルで大成出来るかもしれない人材だな。私の周囲にいる中で、いちばんキラキラ輝いているのは間違いなく彼だろうね。


 その他は、概ねお金持ちの子達だね。高い学費を払える余裕があって、子供を塾やらに行かせる余裕がある家庭出身の、恵まれた子供たち。私のような一般家庭の出が合わせてつるむと、直ぐにお財布が干上がってしまう連中だね。金銭感覚が違うのだよ。


 あとは、元々優秀で親からの期待で通わせられている子。この子達は、純粋に早熟の部類に入る子が多い。おそらく半分くらいは私と同様、20を過ぎればただの人だろうね。ナカーマ。


 さてさて、ここまで紹介をすればおわかりのことだろうが、私のかわいい智洋くんは、この学校の中ではダメな部類である。と言うより、私という例外のせいで能力的にはお金持ちの子達が近いのに、金銭感覚的には早熟くんたちの方なのだ。そうなるとどうしても起きてしまう悲しい事態というのが、


「ひろちゃんおはようっ!今日も一日頑張ろうねっ!」


「あ、ああ。うん。おはよう、さん」


 自信を、失ってしまうのだ。周囲の人間が、彼からしてみればみんな自分より優れている人間になる。そんな中で、ゆっくりと自尊心を溶かされていって、勝手に暗くなっていく。全く君には優秀な頭こそなくとも、私という最高の幼なじみがいるだろうに。自己肯定感の全てをそこで満たせるような単純な人間であれば、こんなに苦しむことはなかったのだろうな。可哀想な話だ。まあ、そうなるように育てたのは私なのだが。


 大好きな幼なじみと一緒の学校に行けると思ってキラキラしていた入学前。光ちゃんに恥じない自分になる!と燃えていたあのころの輝きは、最初のテストの結果で失われてしまった。特待生の幼なじみに対して、下から数えればすぐの自分。そのギャップに苦しんで、どうすることも出来なかった智洋くんの姿はご飯がススムものだった。


 まだまだこれから頑張れば大丈夫!と励ます両親と、分からないところがあったら何でも教えるからねと言った私。そして、その言葉を支えに頑張ったにもかかわらず、さほど変わらなかった二度目の成績。それを受け取った時の智洋くんの表情は、思わず私も胸がキュンとなった。人が自信を失う姿はかわいいよね。胸の中かぽかぽかして、暖かい気持ちが溢れてくる。これが愛だな。


 そして、私の中にみなぎる愛が誕生したのと時を同じくして、智洋くんの中からは自己肯定感が失われたのだ。頑張れば出来ると思っていた強い心がポキッと折れてしまって、心の底から何かを信じて頑張れなくなってしまった。光ちゃんだった私の呼び方が、真白さんになったのもこの頃だね。大きな負荷がかからないように育ててきた、脆い強い心はこうして壊れてしまったのである。かわいそうだね。


 しかも何が救えないって、自己肯定感を失った状態で客観的にはキラキラしている私をそばで見なければならないんだよね。普通なら、負担に感じて離れることも出来るのに、智洋くんは幼少期から人格形成の大半を私によって済ませている。今更私から離れたところで、それがトドメになってしまうくらいには深いところに根を張っているのだ。転生者ってろくな事しないな。


 眩い輝きこそ放たないけれど、ぼんやりじんわり光り続ける智洋くんは、やっぱりおやつ向きの存在だね。物足りなくなったら味変も簡単だし、実に素晴らしい人材である。一転生者に一人、智洋くんを勧めておきたいくらいだね。そんなものを勧められる転生者ってやっぱりロクデナシだな。


 一緒に歩く通学路。私の心を写しているかのようなぽかぽか陽気の暖かい朝だ。対して智洋くんの周辺はなんだか暗いね。本当なら離れたいだろうに、住む世界が違ったんだと諦めたいだろうに、そうするには智洋くんの世界は狭すぎたのだ。そのせいで、こんなに陰の気配を撒き散らしながらも私から離れられずにいる。そのせいで浮いているのも、わかっているだろうに。本当に愛おしい。



 さて、幼なじみの楽しい談笑、ほとんど私が一方的に話しているだけのそれも、学校につけば終わってしまう。智洋くんはとっても慎み深くて、学校で私と仲良くしていることに抵抗があるらしいのだ。3歩後ろを歩くやまとなでしこかな?


 学校に、教室に着けば、私たちはそれぞれのお友達と話すことになる。それぞれの、とは言っても、いつも人に囲まれている人気者な私とは異なり、智洋くんには友達らしい友達がいないのだけれどね。そんな風に浮いていてもいじめらしいいじめが起きないのは、比較的人間ができた子が多いからか。……いや、私のお気に入りだと認識されているからだな。


 まあ、簡単にまとめると、今の私と智洋くんの関係は、昔仲の良かった高嶺の花、と言ったところだろうな。小さい頃は光ちゃんと結婚しゅるーとか言っていたので、初恋は間違いなくいただけているだろう。私が他所で恋人とか作ったら、あの子はどんな顔をするのだろうね。少しばかり知的好奇心が疼く。


 そんな内心をママ様譲りの天使フェイスで隠しつつ、私と話したそうにしている子達に挨拶をして回る。私は高嶺の花は高嶺の花でも、孤独をこじらせて孤高と評価されるタイプではなく、みんな大好きクラスのマスコットをめざしているからね。孤高タイプでは面倒な人間関係を投げ出せる代わりに、才能を見つけても仲良くなれないからね。楽さと効果はトレードオフだ。正直クラスメイトと仲良くするのは労力の無駄打ち感が否めないが、まあ智洋くんおいしいおやつがあるからいいだろう。


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 光ちゃんは、足が不自由な子犬から離れたところにおやつを置いて、這いながら頑張って食べに行く姿に愛を実感するタイプ。ろくでもないな(╹◡╹)

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