間話 ラッキースケベの所在 

 私たちがベアハッグの村を出てから二日目の朝。私は目を覚ます。


「うっわ最悪の夢見ちゃった」


 昔の夢見ちゃったよ、ヤル気テンサゲ全開マックス。あの時は警察に任せれば良いものを、何故かたった一人で乗り込んで、目についた不良をバッタバッタとなぎ倒し、気付いた時には勝利のピースサイン。思い出すだけでも暴れ出したくなるほどの黒歴史の一つだ。

 朝から嫌な気分になった。私は私の隣で眠るロレーヌを見る。

 よしここはひとつテンションを上げるためにロレーヌに偶発的(故意)に抱き着いてその柔らかボディを堪能するとしよう。いや、しようではないそうなるのだ(故意)

 

「ああ、突然座り眩みが~」


 言って私は、狙いすませて偶発的(故意)あくまで偶発的(故意)にロレーヌの方にダイブしようとする。が、


「大丈夫?ルナちゃん」


「アリ?サジさん」


 ガシッとサジさんに羽交い絞めにされる。大丈夫と訊かれるところまではわかるが、何故に羽交い絞めされてるのだろう?


「何故に羽交い絞めにされているのでしょう}


「いや、なんか邪念を感じたものだからつい、ね?」


 そんなことを言うサジさん。しかし、ここでルナちゃんはラッキースケベ(故意)を諦めないぞ。羽交い絞めにされたということは背中にサジさんの胸の感触が……ない、何も感じない。

 私がそう思った瞬間サジさんによる羽交い絞めがよりきつくなる。


「サジさん羽交い絞めがきつくなってません?」


「いや、なんか失礼なこと思われた気がして、ね?」


 貴女はエスパーか何かですか、と問い詰めたくなったがここで問い詰めては私がサジさんに失礼なことを思ったことがバレてしまう。ここは大人しくするとしよう。

 私がそう決めた途端にサジさんは羽交い絞めを解く、ホントにエスパーなんじゃなかろうか?私がそんなことを思っているとサジさんが私に訊く。


「それで、どんな夢を見たの?」


「聞いてたんですか?」


「偶然ね」


「ただの黒歴史ですよ」


「どんな?」


「黒歴史なので言いたくないです」


 私はきっぱりと断る。黒歴史を好き好んで話す奴なんているわけがない。


「それもそうか、それじゃあ姫様を起こして朝支度と参りますか」


 こうして私の朝のラッキースケベ(故意)作戦は失敗に終わるのであった。


 そしてその日の夜、夕食を食べ終わってしばらくした後、眠り自宅にへと入る私とロレーヌ、今日はサジさんは見張り番の日、つまり私とロレーヌが二人っきりで同衾どうきんできる数少ない日である。ルナちゃん実は一度すると決めたことは必ず遂行する程諦めの悪い子なのだ。だからラッキースケベ(故意)作戦に終わりはない、この命が果てるまで諦めてやるもんか。

 決行は明日の朝フフフ見てろよサジさん明日は必ず成功させてやる。


 そして翌日の朝、私は目が覚めると同時、ラッキースケベ(故意)作戦を決行しようとしたのだが、


「なんぞこの状況」


 私の抱き着く対象であったロレーヌが自分から私に抱き着いているではありませんか。こんなの予定にない、どど、どどどどどどどうしよう!?

 私は思いがけないラッキースケベ(偶発)に動揺し、ロレーヌの柔らかボディの感触を楽しむどころではなくなってしまい、そのままロレーヌが目を覚ますまで硬直したまま過ごすことになり、私のラッキースケベ(故意)作戦は成功?に終わったのであった。


 やったねルナちゃん作戦大成功だ!!……成功か?

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