第34話 真意
「知らなかったこととはいえ、此度は我が
ウラッドさんとの戦いから一夜明けて、私たちは領主の屋敷まで来ていた。そして、今私たちの目の前で土下座しているのは先代の領主様だ。
「頭を上げなさいウラッド卿」
抑えられていたもののロレーヌのその言葉には怒気が含まれていた。
「ウラッド卿、貴方に言っても仕方のないことですが、我々王族や貴族は本来民を治め、護る為の存在です。だというのに貴方の御息女は、元来護るべき対象である民をその手にかけていたのです。その罪はどうなさるおつもりなのですか?」
「それは……王国法に基づいて厳正に処罰するつもりです」
「その言葉に嘘偽りはありませんね」
「はい」
「わかりました。ならばわたくしから言うことは何もありません。皆さん参りましょう」
そう言って部屋を去るロレーヌの横顔に怒りや悲しみの感情が感じられた。
しかし、王国法に基づいた処罰とはウラッドさんはどのような処罰を受けるのだろうか?
「ロレーヌ」
「何でしょうルナ」
「ウラッドさん――エリザベートさんってどんな処罰を受けるのかわかる?」
「……」
ロレーヌは何か言いずらそうしている。ロレーヌがそうしてると、ガルシアさんが口を開いた。
「今は牢に入っているが、そう何日もしないうちに牢から出されて無罪放免とはいかないが、領主の職から降ろされ、領内で軟禁、といったところだな」
「嘘!?それだけ!?」
「現在の王国法では、貴族や王族の立場が強いからな。お前の世界にもそういう時代があったのではないか?」
「確かにありますね。でもそれじゃあ被害を受けた人たちがうかばれませんよ」
「それでも法は法だ。気持ちはわかるが我慢する他あるまい」
ガルシアさんはそう言う、言葉そのものは私に向かってはいるが、その言葉はロレーヌにも向いて
いるのだろう。ロレーヌは唇を噛み、行き場のない怒りを我慢していた。
「悪法もまた法なりってやつですね」
「そういうことだ」
「そういうガルシアさんは今回の件はどう思います?」
「それを聞いてどうする?」
「別にどうもしませんよ。ただ、ガルシアさんはどう思っているのかなって」
「ならば訊くだけ無駄であるし、姫様のためにもならん」
あれ、バレてた。こういった時に同じ思いを持つ人がいた方が気がまぐれると思ったんだけどなぁ。気休めよりも現実を直視させるか、やっぱりガルシアさんはロレーヌのことをちゃんと考えているんだな。
「ルナ、それにガルシアも、わたくしのことを気にかけてくださりありがとうございます……」
そう言って無理に微笑むロレーヌ。
「ロレーヌ……」
そんな笑顔はロレーヌに似合わないよ。私はそう思うがこういう時ロレーヌにかける言葉がみつからない。
「姫様って確か王位継承権第一位でしたよね」
そう言ったのはサジさんだ。
「そうですが、それが何か?」
「だったら王様になった時に皆が平等になれる法律を作ればいいんじゃないの?」
「そうは言いますが、他の貴族の者たちがそれを良しとするとは思えません」
「だろうね、でも、全員が全員姫様の意見に反対するとも思わないんだよね」
言われてロレーヌは何かを顎に手をやり、何かを思案する顔になる。
「それは――そうですね」
「だったら、今のうちにそういう人たちを見つけて囲っとけばいいじゃない。貴族の派閥については良く知らないけど仲間は多い方がいいでしょ」
「そうですね、この旅が終わってから――」
「それじゃあ駄目だよ。せっかく各領地を巡る旅をして各領地の領主に直接会って話が出来るのは今ぐらいしかないんだよ」
「つまり、今回の旅でわたくしと同じ志を持つ貴族を見つけろと言ってるのですね」
「そう、それに見つけられないとしても、どの貴族がどんな考えを持っているのかぐらいは調べらるんじゃない?」
「それもそうですね」
「というか、それが本当の目的でしょ。たかだか罪人の被害状況の確認のために王位継承権第一位の姫様を外に出すなんておかしい話だと思わなかったの?」
「恥ずかしながら――もしかして、ガルシアたちは気付いていたのですか?」
「……はい」
そう言うガルシアさんは少し気まずそうな顔をしている。
「どうして教えてくれなかったのですか!!」
羞恥に顔を赤くしてそう怒鳴るロレーヌ
「これも姫様の成長のためです」
「それでもし、旅の最後まで私がこのことに気付いていなければどうしていたのです!!」
「その時は事前に我々が調べた情報を王に伝え、王から直接姫様にご教育なさると。王から言われておりました」
「な……」
ロレーヌが二の句を告げないでいる。ちなみに私はそんなこと一つも気付けないでいた。サジさんやっぱりすごい人だな。
「もういいです!!これからは私一人で調査します!!」
そう言ってズンズンと屋敷の廊下を歩くロレーヌ。しかし、しばらくすると急に立ち止まりガルシアさんの方を見る。
「ガルシア、因みに今までの調査報告書のようなものはあるのでしょうか?」
「あります」
「後でそれをわたくしに見せてください」
「このことはちゃんと王に報告しますよ」
「かまいません!!」
顔を羞恥に染め、涙目でそう言うロレーヌ。こうしてロレーヌの旅路に新たな目的が追加されたのだった。
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