第3章~師~
第19話 喰らう者使い1
盗賊から襲われてから3日経ち、私たちは無事目的地であるウラッド領に入り、ウラッド領内の村についていた。
「おら!キビキビ歩け!!」
「うぅ……」
田中の奴が村の自警団の人に連れられて行く。田中の罪状はロレーヌを誘拐しようたしたことによる不敬罪が適応されるらしい。この国において不敬罪を犯した者は問答無用で死刑に処される。正直に言って自業自得なのだが、いざこいつに待つのは死刑なのだなと思ってみると何とも言えない気持ちになる。
因みに今私は馬車の中におり、ガルシアさんたちがこの村の自警団の人たちに田中の引き渡しと私についての説明をしようとしているところだ。そんな中、私が馬車の車窓をから見える景色をボーっと眺めていると、ひょっこっと小さな頭が馬車の車窓の下部から現れる。
「ん?」
なんだと思いながら私が小さな頭の動きを追っていると、5,6歳の少年の顔が現われた。
「「あ」」
少年と私の目が合う、まずいマントのフードを目深に被っているとはいえ、至近距離から顔を見られた。
「あー!!」
少年が私の顔を指差しながら大声をあげた。
「カズキ姉ちゃんだー!!」
一姫姉ちゃんだと!?ということは一姫の知り合いか?
少年の大声に反応したのか自警団の人たちが馬車の周りに集まってくる。
「カズキだと!なんで一姫が姫様の馬車に乗ってるんだ!!」
私は額を手で覆い馬車の天井を仰ぎ見た後、ロレーヌに向かって言う。
「ロレーヌはここで待ってて、ガルシアさんたちと一緒に誤解を解いてくる」
「大丈夫なのですか?」
「ガルシアさんたちもいるんだし急に襲われることはないでしょ。じゃあ行ってくるね」
言って私は馬車の外にでて、被っていたフードを取る。すると自警団の人たちのざわめきが更に大きくなった。
「あれ?私の姉がまた何かやっちゃいましたか?」
とりあえずそう言っておく。すると、
「私の姉だとう?お前は一姫の妹なのか?」
「はい、そうです一姫は私の双子の姉です」
「はぁ~双子の姉ねぇ~、確かにカズキにそっくりだなぁ~」
そうしてマジマジと私の顔を見る自警団の人たち。あれ?もしかして私の言葉を信用してくれている?
「確かに微妙に顔が違うなカズキには泣きボクロなんてなかったしな」
「なんだカズキの妹か、驚かせるんじゃねぇよう。また悪夢10日間の再来かと思ったじゃねえか」
「悪夢の10日間って一姫はこの村で何をしたんですか?」
私は恐る恐る訊いてみる。すると、
「村の悪ガキどもと一緒にイタズラをして回ったんだよ」
と言う。私はその言葉を聞いて、ホッと胸をなでおろす。よかった思った以上のことはまだしていないんだ。
「ちょうどそこに子供が何人かいるだろう。あいつらがカズキと一緒にイタズラをして回った奴らだよ」
言われて私は自警団の人が指差す先を見る。確かにそこには子供たちが数人おり、こちらを興味深気に見ている。
「兎に角、カズキ本人じゃなくて良かったよ。それじゃあ俺達は仕事に戻るから――あ、一応言っとくがお前はイタズラをしないでくれよ」
「しませんよそんなこと」
言って自警団の人たちは自警団の詰め所に戻っていった。すると今度は子供たちが私のもとにやって来る。
「姉ちゃんホントにカズキ姉ちゃんじゃないのか?」
「違うよ私は一姫の妹のルナっていうの」
「ちぇーまたカズキ姉ちゃんと遊べると思ってたのになー」
行いはどうあれ一姫はこの村の子供たちに慕われていたようだ。
「一姫じゃなくてゴメンね」
「いいよ別に、姉ちゃんは何も悪くないし」
そう言いつつも、残念そうな顔をする子供たち。やっぱり子供は素直だな、と思っていたところ
「ルナ、今日の宿に行くぞ」
とガルシアさんが言う
「宿屋なんてこの村にあったのですか?」
「ない、だから村長の家に泊まることになったんだ」
「わかりました。フードはもう外しててもかまわないですよね」
「そうだな、子供たちの反応を見る限り、顔を晒していても問題ないだろう」
「わかりました。それじゃあ皆またね」
言って私たちは今日の宿である村長の家に向かった。その途中、私はガルシアさんに質問する。
「この村は明日には出立するんですよね」
「いや、ちょっと気になることを耳にしてな。しばらく逗留するかもしれん」
「気になること?」
「ああ、それについては村長の話を聞いた後で説明する。それと一つお前に頼みたいことがある」
「頼みたいこと?」
「ちょっとした情報収集というか、ある人物と接触してもらいたい」
「ある人物――ですか?」
一体誰と接触しろというのか、まさか私のナイスバディを使ったハニートラップをその人物に!?嫌だよ私、男の相手なんかしたらサッカーボールキックならぬゴールデンボールキックしちゃう。
「ルナ、お前今阿保なこと考えてないか?」
「考えてませんよ、大真面目なことです。それでその人物というのは」
「今この村に旅の狩人が一人来ているらしくてな、お前にはその人物に接触してもらいたい」
「旅の狩人ってこの世界では珍しいモノなんですか?」
「特段珍しいというわけではないのだがな、ただその人物は特殊な人物だ。なにせお前と同じ
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