第18話 喰らう者を喰らう者
「
私の言葉にビビったのか、田中はギョッとした表情になり、私から急に距離をとった。
「違う、俺が喰いたいと言ったのはあいつの
「あんたそんなモノ喰って大丈夫なの」
「ああ、大丈夫なはずだなにせ俺の名はイーターだからな」
名は体を表す。確か田中の
「オーケーそれじゃあイーター、どうやったらあいつの
「簡単だ。俺にお前の魔力を込めて
またダジャレ、管理者アールはダジャレ好きなのか?まぁ現状の打開策が見つかったのは朗報だ。私はイーターに魔力を込めて言われた通り呪文を唱える。
「
すると、イータが形状が変化する。その形状は私の右手を覆い手甲のような形になり、拳部分にはギザギザの口のような割れ目が出来ている。
私はイーターを田中に向けて脅すように言う。
「お前を喰らってやる」
その言葉を受け、田中は明らかに動揺する。それもそうだ、田中は一度私から離れたことにより私の
私はイーターを田中に向けたまま、じりじりと、ゆっくりと田中に向けて歩を進める。
「や、やめろ、近づくな!!」
田中が手に持っていた剣を私に投げつける。そんな適当な攻撃が私に当たるはずがなく、体を少し動かしただけでその剣は空を切り私の遥か後方に飛んで行く。
よし、厄介な武器が一つ消えた。後は――
私は田中に向かって疾走、田中との距離を一気に詰める。
「やめろ!!来るなぁ!!げ、
「おえぇ」
「
私の接近に焦った田中は、最初の時と同じように武器を何本も射出、しかし、その攻撃は焦りもあってか狙いがメチャクチャ、私は楽々と武器たちを避けながら田中に接近する。
そして私が自身の間合いに入った瞬間、右拳に魔力を最大限まで集中させ右拳の攻撃力を強化、そして右拳を田中の顔面に向かって振るう。すると田中は、私の予想通り自身の喰らう者をを使用して私の攻撃をガードする。
その瞬間、私の右拳を覆っていたイーターの割れ目が大きく口を開けるように開き、バクリと田中の
「プゲ!」
変な声をあげて田中は10メートルほど殴り飛ばされる。そして大の字になって背中を地につけそのまま気絶した。
「ゴッソサン!!」
イーターが突然決め台詞めいたことを叫ぶ。
「なにそれ?」
「食事をしたのだ。御馳走様と言うのが筋だろう」
「だったら御馳走様でしたでいいじゃん」
「それじゃあ恰好がつかん!!」
「あんたあれが恰好良いと思ってんの!?」
「恰好良いだろう」
この棍棒、言い切りやがった。まあそれは良いとしよう。それよりも残りの盗賊団の奴らだ。ロレーヌが危ない、と思って振り返ってみたら
「なんだ、ようやく終わったのか、遅かったな」
ガルシアさんが何ともない顔で言う
「あ、はいすいません」
「気にするな、良いものも見れたしな」
「良いもの?」
「お前の戦いだ。多重強化とは驚いたぞ」
「あ、ありがとうございます――ところでガルシアさん盗賊たちは」
「ああ、もう終わったぞ」
もう終わったって……相手は20人以上いたのだぞ、それをたった数分で倒したというの!?この人たち本当に強いんだなぁ。しかし、やられた盗賊たちはどこへ行ったのだろうか?
「ガルシアさんやられた盗賊たちはどうしたのですか?」
「ああ、魔法で処理した」
「魔法で処理って――殺したのですか?」
「姫を狙った時点で奴らには不敬罪が適用される。それに奴らはこれまでに数多くの民間人を襲い殺している。殺されても文句は言えない奴らだ」
「それじゃああそこでのびてる田中何某は……」
「生きているのならば一応次の村で自警団に引き渡すが、罪状は姫への不敬罪だからな死刑確定だろう」
流石異世界、命の価値が私の居た世界とは全然違う。だが、田中の奴は私の命を奪おうとしていた。たぶんこれまでも人を殺したことがあるのだろう。自業自得と言えばそこまでだ。
「ところでルナ、お前その怪我は大丈夫なのか?」
「めっちゃ痛いです」
「だろうな、おい、アレックス」
「なんでしょうか?」
「ここに来てルナの手当をしてやってくれ」
言われてアレックスさんが私の元までやって来る。
「これはまた派手にやられたねぇルナちゃん」
「面目ありません」
「ま、
言いながら私に回復魔法をかけてくれるアレックスさん。おお!傷が見る見る治って行く、すごいな回復魔法、今度教えてもらおうっと。
私たちがそうしていると、馬車の扉が開きロレーヌが出て来て、私たちのもとまでズンズンとやって来る。あれ、怒ってる?
「ルナ!!」
「ひゃい!!」
「わたくし言いましたよね、危ないことはしないようにって、なのにこんな怪我までして、心配するわたくしの身にもなってください!!」
「ごめんな――」
私がロレーヌに謝ろうとしたその時、ガルシアさんが私の言葉を制するように言う。
「ルナ謝るな、ロレーヌ姫無礼を承知で言わせていただきますが、ルナはロレーヌ姫を護るため、身辺警護員の任を果たしたのです。そんなルナを褒めるでもなく叱責するとは道理に反しているのではありませんか?」
言われてロレーヌはハッとする。
「ごめんなさいルナ、わたくしそんなつもりじゃありませんでしたのに……」
「別に良いよロレーヌ。ロレーヌが私のことを心配してくれてるのは嬉しいことだしね」
言ってロレーヌに向かってウインクをする私。そうするとロレーヌはいつものように花のように笑う。
やっぱりロレーヌの笑顔は私にとって何よりも癒しになる。よーし、元気が出てきた。
「ガルシアさんとっとと田中の奴をふんじばって、次の村とやらに行きましょう」
「なんだ急にやる気を出して」
「良いじゃないですか別に」
そう言って私はニカっと笑う。
この時私たちは知る由もなかった。次の村で新たな
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