第2章~盗賊~

第13話 新たな旅立ち

 私がロレーヌの身辺警護訓練を開始して1週間が経った。魔法もガルシアさんに習い身辺警護に必要と言われたモノを幾つか習得することが出来たし、訓練経過は上々といったところだ。因みに今の私のステータスはこんな感じだ


―――

真名 双葉ふたば二姫るな

位階 1

権能 喰らう者level1

スキル 魔力操作level3、魔力感知level6、危機察知level7、喧嘩殺法level6、棒術level2

―――


 幾つかのスキルのレベルが上昇し、新たに棒術のスキルを得ることが出来た。因みに位階についてガルシアさんに訊いたところ、位階とはレベルとは全く別の概念で位階の横に数字が表記されている者は転移者や転生者である証であるらしく、位階は1以上に上がることはないらしい。また、権能は管理者より賜った能力のことでそのレベルのあげ方などは同じ権能を持つ者にしかわからないそうだ。


 ちくしょう、喰らう者のレベルが上がれば棍棒から脱出出来るかもと思っていたのに――まあわからないものは仕方がない、喰らう者のレベルの上げ方が判明するまでは自己研鑽に努めてスキルのレベルを上げるとしよう。


「ロディキウム卿、庭木の件誠に申し訳ありませんでした」


 ガルシアさんが領主様に頭を下げる。

 私たちは今、領主様のお屋敷の前で別れの挨拶をしているところだ。


「はっはっは、その件については私自らお灸を据えましたのでお気になさらず」


「そう言って頂けると助かります」


「ロディキウム卿、短い間でしたがお世話になりました」


 ロレーヌが領主様に別れの挨拶をする。


「姫様もお体にお気を付けてください」


 別れの挨拶が済むとロレーヌはガルシアさんのエスコートで馬車に乗り込む。さて、私も

馬車に乗り込むといたしましょうか。私が馬車の扉の取っ手に手をかけたところ、


「ルナ、君は何をしようとしているんだい?」


 ジョンさんが私に声をかけてきた。


「何ってそれは当然ロレーヌの身辺警護を――」


「それは通常の身辺警護員がすることだろう」


「私は通常の身辺警護員ではないと」


「身辺警護員見習いだ、見習いは見習いらしく馬車の外で歩くようにしたまえ」


「でも、私の顔の件はどうするんですか?」


「この街に関しては領民に周知されているから大丈夫だ。他の街に関しても街に入る直前に馬車の中に入れば問題ない」


 ちくしょう、ぐうの音もでやしない。


「歩いていても訓練は続けられるからな、身体強化の魔法はしっかりかけ続けろよ。」


 ダグラスさんがついでのことのように言う。くそう馬車の中でロレーヌと楽しいひと時を過ごそうと思っていたのに、移動中も地獄の訓練とはどれだけスパルタなんだこの人たち。

 私が馬車の取っ手から手を離し、馬車の横に立つ。それを確認した馬車の御者も勤めるロバートさんが、


「出発」


と言って私たちは領主様の館を出発した。

 そして、ロディキウムの街の門まで来たところで、例の門兵さんが私たちを呼び止める。


「おーい、ちょっと待ってくれー!」


「何でしょう?」


「いや、ちょっとガルシア隊長に用があってな」


「ガルシアさんに?ガルシアさーん門兵さんが何か用事があるらしいですよ」


 私がガルシアさんのことを呼ぶと、ガルシアさんが私たちの元まで来る。


「一体何だ」


「いや、この門兵さんがガルシアさんに用事があるって」


「用事?」


「はい、ガルシア隊長に情報提供したいことがありまして」


「情報提供?それは姫の護衛に関することか?」


「お察しの通りです。次の目的地は確かウラッド領でしたよね?」


「そうだが、それと姫の護衛に何の関係がある?」


「いえ、ちょっと耳にしたのですが、最近この街からウラッド領まで続く街道沿いで悪名を轟かせている盗賊がいましてね」


「それなら私も話を聞いているし、恐らくその配下の盗賊に一度襲われている」


「そうなんですね。でもこの話は知らないでしょう。その盗賊たちが最近腕利きの傭兵を雇ったらしいです」


「腕利きの傭兵だと?」


「恐らくは、姫様を誘拐するために戦力の補強をしたのかと」


「そうか――貴重な情報、感謝する」


 そう言ってガルシアさんは門兵さんに頭を下げる。ただの門兵であっても礼をすべき時はきちんと礼をする。本当に良く出来た人だ。そして門兵さん貴方は本当に何者だ。門兵以外の仕事まで出来過ぎる。しっかし、盗賊かぁ次も私の顔でなんとか出来るかな?


「それじゃあ俺は門兵の仕事に戻りますんで、旅の無事を祈ってますよ」


「ありがと門兵さん」


「ああ、元気でな」


 門兵さんはニカッっとウインクをしながら白い歯を輝かせながら笑う、手は親指を立ててグッドポーズ。

 最後まで愉快な人だった。そして私たちは新たな旅立ちをするのであった。

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