間話 ルナ・フタバ
―――ロレーヌSide
わたくしの名はロレーヌ・マグナ、大陸の中央に位置するマグナ王国の第一王位継承権を持つ姫です。
わたくしの住むマグナ王国は大陸の中央に位置しながらも周囲の国とは良好な関係を保ち、ここ数十年は戦争を起こすこともなく、平和な日々を謳歌しておりました。
そう、平和を謳歌していたのです。2年ほど前から異世界から転移してきたカズキ・フタバという人物が突如マグナ王国内で暴れ出し、数々の街や村が彼女の悪行の被害を受けました。
これまでにも異世界からの転移者や転生者はちらほら現われていて、その中には歴史に名を残すほどの活躍を見せる者や、それこそカズキ・フタバのように悪名を轟かせる者もおりました。
なぜ、彼女がそのような悪行を行うに至ったのかそれは誰にもわかりません。しかし、どのような事情があろうとも罪なき人々の生活を脅かしてよい理由にはなりません。そのため、マグナ王国はカズキ・フタバを重罪人として指名手配するとともに、各領にカズキ・フタバから受けた被害からの復興とその対策を講じるように要請を出しました。そして、第一王位継承権を持つ私は父である王からの命を受け、格領に直接赴きカズキ・フタバによる被害とその復興状況及びカズキ・フタバへの対策の視察をすることになりました。
そして、王国を出発してから5日目に事件が起こりました。私を乗せた馬車が10名もの盗賊に襲われたのです。恥ずかしいことなのですが、わたくしは17歳になる今の今まで王都から出たことがなく、盗賊に襲われることなど初めての経験、王国選りすぐりの護衛の兵を付けてはいたものの、あまりの恐怖に叫び声をあげてしまったのです。
「キャー!!」
「姫、馬車の中にお下がりください」
護衛隊の隊長であるガルシア言われて私は馬車の中で震えていました。すると、しばらくしてガルシアが盗賊たちは逃げ出したと報告するではありませんか。一体なぜ、盗賊たちは突然逃げ出したのか、その理由はすぐにわかりました。あの大罪人カズキ・フタバが私の目の前に現れたのです。
情けないことにわたくしはカズキ・フタバの顔を見ただけで卒倒、それが今の友ルナ・フタバとの出会いでした。
ルナはわたくしが今まであったことのないタイプの少女でした。明るくてちょっぴりお茶目な性格で皆ことを自然と笑顔にしてくれる可愛い女の子。あの堅物で有名なガルシアでさえ彼女の前では柔和な、とまではいきませんが雰囲気を柔らかくする。そんなガルシアをわたくしは今まで見たことが一度たりともありませんでした。
そんなルナですが、負わされた責はとても重く理不尽なものでした。歴史の節目にたびたびこの世界に現れる管理者様、その管理者様からルナの実姉であるカズキ・フタバの悪行の責任を肉親だからという理由だけで負わされ、カズキ・フタバを亡き者にせよとの命を受けさせられていたのです。
わたくしでしたら絶望し、管理者様を恨み、悲しみに暮れていたところでしょう、だというのにルナはその理不尽を受け入れ、あまつさえ被害を受けた人々の助けになりたいと言ったのです。
そう言うルナの表情は今でも忘れられません。しかし、というかやはり、ルナの精神は、心は決して強いものではありませんでした。ルナはカズキ・フタバの、肉親の悪行に心を悩ませ苦しんでしたのです。
ルナはロディキウム領の領主の館でカズキ・フタバによる被害の確認中に心労で倒れてしまいました。
きっと辛かったのでしょう、苦しかったのでしょう、悲しかったのでしょう。私はここで決心しました。この旅が終わるまでルナのことを支え続けようと。この先の街ではカズキ・フタバの悪行もエスカレートし、どんどん酷いものに変わってくることでしょう。時には私が耐えられないこともあるかもしれません。しかし、それでもルナのことを支え、ともに苦難を乗り越え、その先にあるものを見届けましょう。
「ね、ルナ」
「急にどしたのロレーヌ」
「なんでもありません」
そう言って私はルナに微笑みを向けると、ルナは
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