Episode.21...Cooked a sweet cake is a piece of my lives.

 最終決戦。

 大文字陽朗の仲間と、飯尾武とのラストシーン。防御壁を口から吐いたペンキで溶かし香を殺害した。その後の飯尾武との一節である。

「襲われるという感覚はどうだい?」

「何故、そんな事を聞く?……まさか、もう香君を殺したのか?」

「楽しかったよ」

「楽しんで人を殺すなんて尋常じゃない。やむを得ない理由もなしに殺すのか?お前は?」

「楽しいんだよ……楽しい戦いを望んでいる。愉快なゲームに敵は付き物だ」

「敵か……人生を掛けて、お前を倒す!」

「それが良い。倒されようとするまでの時間が愛おしい」

 銃で二、三発打った。弾丸は血に染まらず。

「ハッハ、愉快だ。君は、速度を望んでいるんだね?速さは、圧力には勝てない。速度を圧倒するまでの圧力だ。受けてみるが良い」

「何だ、何の音だ。これは音波なのか―――?重低音の領域が広すぎて、耳がおかしくなりそうだ」

「音は、弾丸より、早く。厚みを持つ。コサイン波の領域に沈むといい。もう貴様は操られている」

「手が、勝手に動く―――何故なんだ……」

 そして、飯尾武は、自分で自分の手を邪気の雫で撃った。音波によってジャミングされた手は異能に染まってしまった。そして、その手の部分の異能をあの世へ送ることによって、解除した。

「ほう、復活したか」

「―――じゃあ、後半戦だ。渉、出番だ。チェーンソー男を呼び出せ―――貴様には俺の餞をあげよう」

 そう言って。

 飯尾武はシャンデリアを撃った。すると、大文字陽朗によるペンキの塗ってあったシャンデリアの根元のみに空間ができ、シャンデリアが墜ちた。それをよけている隙に、渉がチェーンソー男を呼び出した。

『まだ、傷がイテェな―――』

 チェーンソー男は、パレットの後遺症で左手を失っている。

『むやみにチェーンソー使うと、渉の親分がうるせえしな。だったら、鞭でも使ってやるよ。啼け、”残帝”』

 すると、鞭を使ってシャンデリアを雁字搦めにしたあげく、それを力任せに振り回した。

 それを奥から現れた彰子が、時間稼ぎをしている隙に仲間の男の顔をパレットに描いた。

 『おい、そこの女、何を、畜生。邪魔が入りやがって―――』

 すると、彰子の顔に男の顔が写りこんだ。

 『こいつのお返し知っているだろう―――?』

 そういって、音波が流れてきた。男は耳をふさごうとしても、鞭と邪気の雫を交わしながらだとそうは上手くもいかない。男は音波にジャミングされ、自分で自分を銃で撃った。

 『ギャアアアア―――[死狂世界で王に君臨して、人間の姿で暮らしていた俺を救ってくれたのがあの作家兼探偵の先生だったのに、そうだろう、大文字陽朗?]』

 男の声が変わる。アンリアルシークレットへ行ったのだろう。

 時は刻む。雨は止まなかった。

 『……貴様も使えんな、所詮は序列一位』

 そう言った、声が遠くから聞こえた。大文字陽朗だった。

 『香と香の妹は死狂世界で仲良くやっているさ。呼び出してやろうか?』

 『元気ならそれでいいわ、探偵さん。後は貴方の死を星に誓って祈るのみ―――』彰子が言った。

 『君の仲間に逢わせてやろうというのに、その仕打ちは私の彼女となるのにはふさわしくない』そう言って、ペンキをパレットにつけた。

 ―――パレットは溶けない。

 『何か小細工をしているのか?面白い小道具をお持ちのお嬢さんだ』

 『貴方よりはましかもね』彰子はそう言って、大文字陽朗を描こうとする、しかし、ペンキによって付着されたパレットは効果をなさない。彰子は嫉妬した。

 『何故、お前は、私の同僚に茶々を入れるんだ』飯尾武は言った。

 『正義の真似ごとをしているからだよ。その姿は実に美しい。私の子分にしたいからさ。もしよければ彰子君。私のフィアンセにならないか?』

 『どっちか強い探偵さんの元へ付くわ。それは譲れない。あたしは生き死にがかかっているから、いざという時頼りにならないと困るもの、ねえ、お兄ちゃん』

 『俺は武さんかなあ、強いし』

 『ふざけるな!』飯尾武が言った。『俺の彼女を殺しておいて、今さら俺から何もかもを奪うのか。戯れるな!』そう言って、邪気の雫で心臓を撃った。しかし、倒れたふりして、華麗によけた。

 あざやかに、そしてペンキを吐いた。邪気の雫を解析するために。

 大体のデータが入ったところで、同じものを取りだす。

 そして、死んであの世に行った大文字陽朗の仲間の男、音波を使えたことを思い出す。あいつをアンリアルシークレットから強引に呼び出し、顔にペンキを塗り能力解析をした。

 ほう……

 『君の投げたカードはそれか、だったら、次は私の番だ』

 そうして、ペンキを吐いてくるのを防御しようと身構えていたが、一向に来ない。不思議に思っていると、飯尾武の手が勝手に銃口をこめかみに向けている。

 何故だ……?と思っていると、白い空間が呼び出された。これは、私の邪気の雫を撃った時に現れる仮想空間。

 しまった、撃ったのか……。

『[私は君達の能力を使って、解析を行った。そう。もう君は死んでいるんだよ―――]』

 『彰子は?』

 『もう、勝敗は決まった。コインの裏表を見るような対決ではなかったのが残念だろう。仕方のない。私の勝ちだ。彰子君は私が貰って行くよ』

 『分かった、お前にはこりごりだ。死狂世界では逢わないことだな、決してお前を許さないから』

『分かったよ、飯尾君。君の元カノと仲良くやってくれ。それが私がここにやってきた理由の一つだ』

『そうか、お前も親切だな―――』

『グッドラック、ディアフレンズ』大文字陽朗が言った。

『グッドラック』

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