三題話「木箱」「広場」「物音」

あめはしつつじ

三題話「木箱」「広場」「物音」

 広場は石畳。

 兀々と靴の音。

 黒の音。

 喪の音。

 靴音は木箱を運ぶ。

 木箱の中には町の人。

 もう立てない町の人。

 物音立てない町の人。

 立てない足の町の人、

 運ぶ町の人の足音。

 広場は石畳。

 兀々と靴の音。

 黒の音。

 喪の音。




 町の人が、木箱に入れられるようになってから、もう二年が経った。

 最初の方の木箱は大きくて、背の高い男の人がよく入れられた。

 だんだんと木箱は小さくなっていって、僕のお祖父ちゃんやお母さんも木箱に入れられた。

 僕達がよく、駆けて遊んでいた広場。

 僕達は今、木箱を運んでいる。

 木箱は随分と小さくなっているから、僕達でも、なんとか運んでいける。

 今日は僕より、一つ年上の、広場でよく遊んでくれた、パン屋のお姉ちゃんの木箱を運んだ。

 木箱の大きさは、僕より一回り、大きい。

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三題話「木箱」「広場」「物音」 あめはしつつじ @amehashi_224

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