聖女は処女じゃないとなれないなんて噂は誰が流したんですか?
朱之ユク
第1話聖女が処女と決めたのは誰ですか?
聖女は処女じゃないとなれないと決めたのは一体誰だろうか?
光り輝く聖魔法を扱うかわいい女の子。
すべてを癒す奇跡の使い手。
そして、男の全てを魅了する綺麗な女の子。
そんな女の子たちが処女なわけがない。そんなことは世間の常識だと思っていた。 だけど、それは私のくだらない幻想だったらしいと言うことを今しがた理解させられたばかりだった。
私が空を飛びたいと願うのと同じように、子供たちがサンタクロースの存在を信じ
るのと同じように、聖女のファンの方も私たち聖女が処女であると信じていたのだ。
そんな奴らに一言。
くだらない。
どうせいつかは聖女が処女ではないと知るのだからここで真実を叩き込んであげよう。
”聖女は処女ではありません!”
作成者 カリン・フィルナード
*
私が人に怒られることがあるとすれば、きっととんでもないことをやらかした時に違いない。
「ねえ、カリン! この文章はいったいなんですか!」
私たち聖女の住まいである教会に鳴り響く怒鳴り声。
それは明らかに私に向けられたものである。そんなことはみんな理解していることだ。
「なんか問題ありますか?」
「ありますよ! カリン。あなたたち聖女は一般市民からのカルト的人気を誇っているのよ! それなのに、どうしてこんなヤバい文章を書けるわけ?」
一体どこら辺がヤバいんだ?
私はただ聖女は処女じゃないと訴え出ただけだ。それは特に何も問題ではなくない?
「問題大ありです。一般市民はあなたたち聖女に処女であってほしい。清廉であってほしいと願っているの。それなのに、処女じゃないなんてしれたら炎上するわよ」
「しないでしょ! あなたは理解していないだけで、聖女みたいにかわいい女の子に処女なんていないの」
「それはそうかもしれませんがそれを公にするのは間違っていると言っているのです!」
「はあ、これだから処女は……」
「うるさい!」
痛いところを突かれたという顔をしている。目の前にいる美人はこんな可愛らしい顔をしておいて今までの人生で一度も彼氏ができたことが無いというちょっとキモイ女だ。
大方人間不信で友達も彼氏もできなかったらしい。
まじでウケる。
友達いないとかありえないから(冗談)(笑)
「まあまあまあ、あなたも女性用風俗とかに行って来たら? 知ってる? エッチって初めて以外はものすごく気持ちいんだよ?」
「本当なの?」
「本当だよ」
嘘だ。
ネットには男によって痛いときもあると書かれていた。
そんなことも知らずに興味ありそうな顔をしている彼女を見ていると拗らせている処女というのはやっぱりキモいんだ、という結論に達する。
「詳しくその話を聞かせなさい……違った。今はあなたの話よ」
「……バレたか」
やっぱりこの女はチョロい。この調子で話を逸らして関係ないことを進めよう。
「あなたはどうして聖女は処女ない、なんて言えるの?」
「だって実際聖女の中で処女の女の子なんて全然いないよ」
「それはそうだけど」
「だったら別に処女じゃないと公言しても問題なくない? 実際みんなち〇ち〇の気持ちよさを知っているの。乳首を開発されている女の子だっているし、はっきり言うけど汚されてない女の子なんていないよ」
「ちょっと待ちなさい」
「みんな中等部の学校にいる時にクラスのヤンキーとエッチしてきたの! 私が知る限りこの場所に処女なんていないわよ。それなのにいつまでも彼女ができないように弱者男性を騙してお金を巻き上げているビジネスなんてやめるべきよ」
「だからちょっと待ちなさい!」
「聖女はみんな男性のカリが良いって知ってるのに、女の子の中の良さを理解できてない弱者男性が可哀そうだよ」
「私はまだエッチしたことないんだけど! それなのに聖女はみんな処女じゃないなんて言わないで! あと弱者男性は別にかわいそうじゃない」
ああ、そうだった。
この女はまだエッチしたことないんだった。
「ぷっ。エッチしたことないとかウケる(笑)」
「笑うな! 大体男からしたら経験が多い女の方がキモいんだから!」
「女からしたら経験がない女の方がキモいんだから」
「くっ! キモイっ!」
「ほら。私に謝ってみなさいよ。今まで誰にも相手されなくてもごめんなさいって」
「ち〇ち〇の気持ちよさを知らなくてごめんなさい!」
そこまでは言ってないから。
でも今の彼女はとびっきりみじめだ。
まったくこの女は話が通じない。この女は男のち〇ち〇でかき回される感覚を知らないから処女でもいいと思えるんだろう。
あの脳がズキンズキンする感覚。知らないなんて恥ずかしいよ。
あれを体験したらマグロでもない限りエッチをしたいと思う。
「可哀そうな人だね」
「死んでしまえ、あなたは」
鋭い眼光。
軽蔑されていることがわかる。
「まったくこれだから処女は」
「ねえ、朝からうるさいんだけど。いい加減黙ってくんない?」
扉を開けて一人の女の子がやってくる。
彼女もこの教会の聖女である女の子の聖女の一人だ。
「ああ、カリン? いったい今を何時だと思ってんの?」
「仕方ないでしょう? 今はこの処女野郎にエッチの気持ちよさを教えているところです」
「……」
「なんで黙り込むんですか? この女は処女だからち〇ち〇の良さを知らないんですよ。だから叩き込んでやる」
「ちょっと、別に知らなくても良いわよ! それよりも聖女が全員経験済みなんて文章を世間に発表しようとしたカリンを叱りなさい!」
「うるさい。事実を言って何が悪い!」
「ちょっと待って!」
ひと際大きな声がこの場を制した。私たちは仕方なく声をあげたものを観察することにする。一言で言えば黙らされたということだ。
「さっきからカリンがエッチの良さを教えこむとか意味不明なこと言ってるけどさ」
マズイ。
そう言えばこの女は私の秘密を知っているんだった。
止めようとしても今更止められるものではない。私は自分の名誉が傷ついてしまうのだと思って考えるのを止めた。
「そもそも、カリン。あなたも処女でしょ」
私が今までひた隠しにしていた事実。
私は実は処女であるという事実。
「な! あなたは処女だったのですか! それなのに私にごめんなさいと謝らせたのですか!」
「バレたか!」
実は私も経験がないとどうしてばれたんだ!
「そもそも男のち〇ち〇が気持ちいと決めつけてるのがおかしいのよ。あれは大きくと硬くてカリがでかい男なら良いけど、それ以外はそこまで気持ちよくないわよ」
「なっ!」
「そうなんですか?」
「なんで二人が同時に驚くの?」
三人目の女の子は「それじゃあねカリン」とつぶやいて部屋を後にした。
「それじゃあ私ももう部屋に戻りますね」
「待て」
私が歩き出そうとすると私の肩を押さえつけられた。
しまった。
これで動けない。
「あなた処女じゃないんですってね」
「……」
「謝りなさい」
「なにを?」
「私に謝らせたことよ」
逃げても良い。
だけど、そうしたら関係が悪化するだけだ。
そもそも私はみんなが処女じゃないと主張することで処女の私の人気がアップすることを狙ったんだ。
だけど、その狙いがバレてしまった。
こうなったら、謝るしかないだろう。
仕方ない。
ここはとびっきり反省した顔を作る。そうして謝り始めた。
「あなたに謝らせて申し訳ありませんでした」
「……」
「ち〇ち〇の気持ちよさを知らないで申し訳ありませんでした」
「……ちょっと」
「処女なのに処女をバカにして申し訳ありませんでした!」
「……ちょっとちょっと!」
「何を怒っているんですか?」
恐る恐る聞いてみる。
丁寧な謝罪。
そして、とびっきり反省した顔。
それなのにどうして怒られる……。
「当たり前でしょ! なによその顔は?!」
「反省した顔ですが」
「反省した顔がそんな顔になるわけないでしょ!」
まあ、ここまでこの人が怒るのも仕方ないかもしれないかもしれない。
だって。
「あなたは反省する時にアへ顔をするの」
アへ顔が私の最大級の反省を表しているのに。
「反省しないさい!」
「反省しているもん!」
「うるさい! この処女ども!」
あ、ごめんなさい。さすがにうるさすぎたか。
さっきの女の子がやってきて怒鳴って来た。
「ごめんね」
「……なんでアへ顔? 絶対反省してないでしょ? なんで怒られているときにアへ顔をするの?」
……。
「アへ顔の方が空を飛びやすいかと思って」
「バカ」
さて、今日も良い一日になりそうだ!
聖女は処女じゃないとなれないなんて噂は誰が流したんですか? 朱之ユク @syukore16
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