ヤンデレストーカーな残念美少女ドジっ子お嬢様がポンコツ過ぎて逆に可愛くなってきた件

リヒト

第一章 二人

ヤンデレストーカー

 高校三年生の冬。

 共通テストが迫る大学受験生にとって、あまりにも長く寒い冬……であるが、それが既に推薦で受験を終わらせている高校三年生となるとまた、話が変わってくる。

 私立の進学校には受験の迫る十二月から三月の卒業式まで学校が休みということ場合もあり、そんな学校に通う推薦組高校三年生の暇さ具合は実に異常と言える。

 冬休みが驚愕の四か月もあるのだ。


「ううっ……はぁー」


 ここにいる誰もいないマンションの一室で一人、ゲーミングPCを開いてヘッドホンをつけている高校三年生、黒岼朝陽もその冬休み四か月をもつ者の一人である。


『ナイスー』


『おう、流石やな』


「うん、ナイスー」


 そんな暇を持て余す朝陽は今、ネッ友たちと通話を繋ぎながらゲームをしている真っ最中であった。

 朝陽が共にゲームをプレイするのはいつものメンバーと言える男のうさぎジャムと女のぐれほしだ。


『毎回、このマッチング時間中暇だよなぁー』


『そうだよね……この、どうにかしてマッチング時間短くならないかな?』


「そうだね。これでも運営が一度、マッチング時間を短縮させるためにアプデした後なんだけどねぇ」


『確かにマシになったと言えばマシになったが、それでもまだまだ遅いよな』


『そうだね……ずっと変わらずにマッチング時間中は暇。ねぇ、ロア。何か面白い話してくれない?』


「……また、雑な振りを」


 ぐれほしから何とも雑な振りをされた朝陽は苦笑を漏らす。


『何だー、ないのかー?面白い話』


「面白い話ねぇ……あぁ、そうだ。これを面白いと捉えるかは微妙なところだけどさ」


 うさぎジャムから煽られる朝陽は手元にあるいちごミルクを飲みながら何かを思い出したかのように口を開く。


「いや、さぁー、僕ってばストーカーいるんだよね」


『『……は?』』


「というのもね?昼だろうか、夜だろうか当たり前のように隠れながらつけてくるなんていう次元の話じゃなくてね?」


『『……は?』』


「さも十年来の友人であるかのように僕へと話しかけてくるし、僕が女の子と話せば独占欲をむき出しにして怒ってくるし、当たり前のように僕の家の前にやってくるし、まるで名前も知らない不審者なのに彼女面してくるんだよね。あいつに己がただのストーカーだっていう自覚はないのかな?」


『『……は?』』


「でも、合鍵を作ろうとして普通に失敗していたり、僕の家にピンポンしようとして、階数を間違えていたり、なんかドジっ子なんだよね」


『『……んっ?』』


「ヤンデレっぽいのにドジっ子。すっごく意外で面白くない?だからさ、僕は僕で通報とかせずに監視して楽しんでいるんだよねぇー、それが最近の趣味」


『『そうはならんやろっ!?』』


 なっとるやろがい。

 朝陽の軽い口調で語られるとんでもない話へとうさぎジャムとぐれほしの二人はツッコミを入れるのだった。

 

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