憧れの秘密基地

テリヤキサンド

憧れの秘密基地

高校の帰り道、1人でゆっくりと歩いていると知り合いの小学生が電信柱に隠れながら、こそこそと移動しているのを見かける。

かくれんぼかなと思い、少し様子を見ているとそういうことではなく、数人でスパイ映画の真似事をしているかのように1人が周囲を確認して、後ろの仲間をハンドサイン?を使って、誘導しているようだ。

そんなごっこ遊びをしているらしい子達が声を漏らしつつ、移動していく。


 「・・く、秘密・・・へ行かないと。」


秘密?

うーん、なんか隠しているのか?

子供達だけでいいのか。

よし、ちょっとかわいそうだと思うけど、声をかけるとしよう。


 「おーい、何しているんだ?」

 「「「!?」」」


できるだけ優しく声をかけたつもりだけれども、首を高速で振り向かせるほどに驚いたようだ。

そして焦り出す子供達。


 「ど、どうしよう。」

 「こんなタイミングで見つかるとは。」

 「せっかくの計画が。」


なんか悪いことしちゃったかなと反省していると。


 「で、でも大体できてるし、もういいんじゃない?」

 「確かに後少しで完成だしね。」

 「じゃあ、もうばらしてもいい?」


どうやら、特に問題ないみたいだ。

子供たちの相談は終わったらしく、こちらに顔を向ける。


 「お兄さん、ちょっと一緒に来てくれませんか?」

 「どこにだい?」

 「秘密基地。」

 「おお、秘密基地か。」


なんだ、何かを飼っているとか心配したけど、秘密基地か。

この年齢なら、秘密基地って憧れだよな。

よし!


 「オーケーオーケー。

案内してくれよ。」

 「!やった!」


どうやら、俺に秘密基地を見せたくてこそこそしていたらしい。

もう隠れる必要はないようで、機嫌良くどんどんと進んでいく。

連れてこられたのは少し木々が密集した場所。


 「さあ、ここだよ!」


草木を退けるとそこには洞窟が見える。

おお、こんな場所があるなんて、随分本格的だな。

少しワクワクしてくるな。

子供達と共に洞窟を進んでいくと行き止まりにたどり着く。

ここから先はどうするのかと思うと、壁には少し横穴が空いていて、そこに子供は目を合わせる。

すると穴から赤い光が出る。

お、もしかして、網膜スキャンの真似か?

近頃の小学生は凝ってるなあ。

赤い光が収まると壁が横へと動き、通路が現れる。

その通路は明らかに人工的に作られた金属製の通路。

流石にこれは違うだろうと気づいたが、子供達がどんどんと進んでいき、俺も戸惑いながらもついていく。

やがて、通路が終わり、広間へと出る。

その広間には子供達が何かの制服を着て整列しており、俺たちはその広間の上部タラップからそれを見下ろしている状態。

もう頭が混乱して一体なんなのかわからない。

気づいたら、俺を先導していた子供も同じ制服着ているし。


 「ええと、秘密基地の案内なんだよな。」

 「うん、そうだよ。

お兄さんの秘密基地。」

 「俺の秘密基地!?」

 「だって、いつか欲しいなって言ってたじゃない。」


それをいったのは確か、中学の頃。

かなりの厨二病で近所の子供達を集めては色々と話していたのを覚えているが、ほとんど夢物語だぞ。

そんで、最後、俺はなんて言ったっけ?


 『秘密組織っていいよな!』


 「あああああ!」

 「あらら、そんなに喜んでくれるなんて嬉しいなあ。

ねえ、お兄さん・・・いや、ボス!この秘密組織の名前を教えてください!」


キラキラした目で見つめてくる子供達を前に俺は必死に名前を考えるしかない。

一体、この先どうなるっていうんだ?

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