第4話 さようなら


「色々とやった、仲間を裏切る事は心苦しかったが......俺もルエルを裏切ったからな......」


 腹からは血液が流れ出る。聖剣により魔族への特攻を持っているからだろう、自然治癒では間に合わない、それにこれは回復では癒せぬだろう。

 もう座る気力もなく横になりながら話す。


「ッ......じゃあ『風斬魔シャクシー』があたしたちと一緒に海底神殿で閉じ込められたのも......」


 ルエルが動揺しながら聞いて来た。


『風斬魔シャクシー』は機動力を生かした戦闘が得意だったからな、不利な地理、逃げられず、狭い場所として海底神殿が良い場所だった、勇者が聖剣への道を開き海底神殿に向かっていったと伝えたら喜んで向かっていったのを覚えている。


「どうしてあたしなんかの為に......」

「......あの虹色が綺麗だったからな」

「そんなの......」


 愛の魔法か......あれは何物にも代えがたい美しい魔法だった。


「......勇者マルス、ここまで来たのだ......必ずや魔王様を打ち倒せ」

「――言われずとも」


 勇ましい、これなら安心だ。


「ルエル、あの魔法をかけてほしい」

「あの――ぁ」


 ルエルは泣きじゃくりながらその意図を察してくれた。


「ズードッ......ありがとね」


 倒れてる俺の頭をルエルは手をかざす、そして赤い炎の玉が現れる。

 そこから色が混じり合い七つ色の炎が出来上がると彼女の手から離れていく小さくゆらゆらと揺れながら俺に目掛けて落ちていく、きっとこれが落ち切った時、俺は死ぬ。


「――俺は幸せ者だ」


 魔族の父と人間の母の死、その血の所為でいじめられた幼少期、色々とあったが好きな人に看取られるなんて幸福な事だ。


「さようなら」


 気が付けば、虹色の輝きとルエルの泣き顔が最後に目に焼き付いて......意識が遠のいていった。

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