第3話 最悪な再会


 ズリ村の襲撃、その報を受けた時真っ先にそこへ向かった。


「ッ――遅かった」


 既に家の数々は切り刻まれ、俺に親切にしてくれた人や見知った者もみな無惨に死んでいた。


「ルエルは――」


 ルエルを探そうとした時、背後に立つ存在に気が付いた。


「そう急くな、四天王ともあろう者がこんな醜態を晒すなど......全く」


 男の声がして、振り返る。


「お前は」


 四天王が一人『風斬魔シャクシー』が背後に立っていたのだ。


「シャクシーこれはどういう事だ?」

「どういう事とは?」

「とぼけるな、俺はここの村は脅威にならないから無視しろと報告したはずだ」

「はぁぁぁ......甘い」


 シャクシーは吐き出すような溜息を零す。


「ルエルは脅威になりえない......か、『煉獄卿モルド』知将とも称えられる者がこれでは『氷結眼ミリオネ』が泣くぞ?」

「どういう意味だ」

「まんまの意味よ、我らに仇為す芽は全てが脅威ッ......『雷鳴殺ガルバド』の様にしていたら手間取って仕方がないわ!」


 こいつ......


「とはいえ仲間だ、おぬしの失態にこの我が直々に尻拭いをしてやったまでの事よ」

「ッ......それでルエルは何処に?」

「我も探していた所よ、しかし見つからぬ、おぬしは何か知っているかね?」


 見当はついている、何時も彼女の修行に使っていた遊び場にいるはず。

 不味い、『風斬魔シャクシー』は四天王中でも俊敏に動き感知能力にもたけている、すぐにばれてしまう。


「わからないな――ただ旅に出たがっていたからもしかしたら村にはもういないかも――」


 どうにか距離を取ろうとするが......ある気配がもう近く来ている事に気が付いた。


「......ッ」


 嗚呼――何故来てしまった、来てしまったんだルエルッ!



「これ......なに......」


 ルエルがただただこちらを見ている。


「あれがルエル、さて殺すか」

「ッ......少し待て」

「?」


 止めたは良いが......


「ズード......でしょ?」

「――違う」

「ズードなんでしょッ!知ってるよ......あんたが偽装魔法使ってた事くらい」

「――」


 驚いた、まさか俺が偽装魔法を使ってたのを知っていてあんなふうに接してくれていたのか?


「きっと何か理由があるんだと思ってッ――なのにッ」

「......」

「騙してたんだ、みんなを......」


 そこでシャクシーが口を挟んでくる。


「そうだとも、おぬしは我らが四天王にして知将『煉獄卿モルド』とも知らずに仲良くなれたと思っていただけ......滑稽極まる」


 やめてくれ。


「許さない、あたしたちを騙して、お父さん、お母さん、皆......殺してッ......」

「話は終わりか?」


 シャクシーは魔法の準備をする。


「待てッシャクシーッ!」


 シャクシーは腕に風の刃を纏いルエルに向かって放つ――


「――」


 すると――彼女の腕から怒りのままに放たれた炎の魔法はシャクシーの魔法を打ち消しながらこちらへと近づいて来る。


 あれは四天王を殺しうる攻撃――


「撤退するぞ!」

「ッしかしここで逃しては......」

「死にたいのか!?」


 シャクシーを説得する、実際のところここで撤退する必要はなかっただろう、俺はともかくシャクシーならばあれは耐えていた、そしてルエルはそのまま殺されていたはず、つまり彼女を逃す為にここは撤退を選択した。



 ■



 ズリ村は滅び、ルエルは長い間行方知れずとなっていたが6年ほど経ち彼女が勇者パーティの一員になった事を知った俺は......もう一度会いたいと思ってしまった。



 だが彼女は激昂のままに俺に攻撃を仕掛けてきた。


 そうだもう彼女とは仲良くなれないのだ、だけどせめて陰ながらでも応援したい、俺は勇者を守るではなくルエルを守る為に動く事にした。

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