第1話 新入り ハヤカワ ユキエ 3等陸曹
20XX年 日本 関東圏 某所.
「アニスさん、まずは良いニュースから。この度、悪の組織の宇宙盗賊団デブリクラウドが撲滅され、新しい組織が台頭してきましたデスネ」
「いつものことじゃん、次はどんな連中?」
「
「なんそのネーミングは、ウケる」
「デブリクラウドと違うのは、獣人か動物めいた特殊能力を秘めているのではないかとのことで目下調査中とのことデスネ」
「で、悪いニュースは?」
「新入りが入りますデスネ。
「What the fuck!,Piss is the shit.」
「そういう気持ちも分かりますが、仕方ないデスネ。ワタシ達とは違うデスネ」
「赴任はいつから?」
「現在、基礎訓練とかの再履修中で、明後日には着任デスネ」
「オッケー、精々楽しみにしておく」
この度、日本国への人外知的生物集団の無差別殺人、攻撃により制裁戦争にまではいかないにしろ
相互安全保障条約第5条(日本の防衛)及び第6条(地域安全の確保)の促進に寄与と共に、在日米軍特殊部隊と日本の安全および極東の平和維持に貢献するための地域安全保障協力活動を推進する観点からの出向ではあるが、実際は米軍が暴れまわるのを抑止する足枷である。
黒い髪を後ろで束ね、安いメガネメーカーの黒縁メガネ。
ワークマン女子で買った安くて黒いポロシャツとチノパン。
腕にはタフが売りの高い電波ソーラー腕時計。靴はゴアテックスのローカットなトレッキングシューズ。
「…官給品での出勤禁止ってあったから、仕方なくこれできたけども果たして大丈夫なんでしょうか」
そう呟くハヤカワ3等陸曹。
指定された場所は、第1師団第1飛行隊の航空機等格納施設付近の
部屋番号も記載され、とある部屋へと向かう。
普通のマンションの一角の部屋であった。
米軍特殊部隊がここで?と疑問を抱くも、無機質な扉の近くに設置してあるインターホンを押した。
「すみませーん、ハヤカワユキエと申すものなんですがー」
《ハイハーイ、今開けますデスネー》
「ありがとうございますー」
☆ ★ ☆
「ハヤカワユキエ伍長だっけ?どうやってこの班にパスした?」
「いや、3等陸曹です」
「うるせぇ。こっちじゃ、3等陸曹は伍長と同じみたいなもんだ。あと、サーを付けろとまでは言わないけど、サーを付けろ」
「サー!アニス大尉!」
「なんかジャップにサー言われるの、気持ち悪いな。やめろ」
「サー!」
「アニスさん、あんまり新入りいじりしないでくださいデスネ」
「リズは、甘いんだよ。昔はもっと新入りに厳しかったろ?」
「昔は昔デスネ、今は多種多様で多岐にわたる接し方があるデスネ」
「あっそうですか、デスネのネェちゃん」
「おっ?喧嘩しますデスネ?」
ハヤカワはアニスとリズと呼ばれた二人を見た。
アニス・ヘンダーソン大尉。
ブラボー1の班長兼ポイントマン兼工作担当
茶髪にベリーショートヘアは、後ろを刈り上げてある。
支給されているクルーネックの 半袖シャツにOCP迷彩のズボンとサファリシューズ。
今は、腰には拳銃用のホルスターと予備マグのマグポーチ3つ。ホルスターの中には、米軍制式採用されていたM92Fが収まっていた。
リズ・マッキーバー軍曹。
ブラボー1班長補佐兼通信担当兼
黒色の髪を後ろで束ねていた。
グレーの長袖ポロシャツにアニスと同じ
今は腰に大尉と同じM92Fを吊っていた。
今日から、この二人と組んで、日本の平和を守っていくのかと思うと老い先不安でしかないハヤカワであった。
「新人!今日は歓迎会だ、呑むぞ!」
「もうお店予約してあるんデスネ、痛飲デスネ」
「…それ、呑んで大丈夫なんでしょうか」
あまり嬉しくない顔をするハヤカワだったが、それを見かねたように突如として無線に通信が入った。
『緊急伝達、繰り返す緊急伝達。西新宿2丁目にて怪人群出現、新宿三井ビルへ侵入、破壊活動を開始した。国民保護法の観点から、国家緊急事態宣言に準ずる前段階として出動要請が出た』
「ブラボー1、了解。これより出動する」
アニスが部屋に設置してある
相方は、無言でテレビの電源を付けて報道の中継を見た。
取材ヘリのカメラが、上空から逃げ惑う人々を映している。
その映像とアニスを交互にハヤカワは見る。
「夜通し痛飲はキャンセルだ、新手のクズ共が現れたらしい」
「了解デスネ、ハヤカワさんも同行で?」
リズは、口角を上げて、ハヤカワを見た。
それにため息をつきつつ、アニスは続ける。
「当たり前だ、出動準備しろハヤカワ伍長。武力攻撃事態が認定され対処措置の認可の元、これより現地人外知的生物集団を制圧及び撃滅戦に出る。10分で準備、後に第1飛行隊にお使いのお願いする」
そのアニスの言葉に、ハヤカワは驚いた。
ニュースとかで、怪人の撃滅速報はよく聞いていたが、それをこれから自分達が行うというのだ。驚きは隠せない。
「こ、これから、私達が、か、怪人を…」
ビビっているハヤカワにアニスは鼻で笑いながら、一瞥した。
「そうだ、これから怪人狩りをするよ、しかも空薬莢拾わなくてもいいし訓練とは違う。ワクワクドキドキするだろ?」
「全く持ってものすごく激しくドキドキもワクワクもしません」
それもそのはず。
怪人が現れているのは、主に人口密集地が多く、民間人への誤射もあり得るし、可及的速やかに無力化しないと更に被害が広がる。
それを毎回制圧し被害を抑制しているがこの二人だったのだ。
怪人が撃滅されるとすぐに速報が流れる。
その速報を穏便に流すこともハヤカワ達の仕事になるのだ。
その仕事を請け負うという責任感が今更になって彼女へと降り注ぐ。
ハヤカワユキエ3等陸曹。
衛生及び火力支援担当。
初日からの残念な初陣となる。
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