BLACK BOARD

最悪な贈り物

第1章

王国センピゼント編

第1話 第1話なのにプロローグ

『今日の猫ちゃん動画は〜こちらでーす!!』


 明るい笑顔をしながら紹介するアナウンサーの合図の後、画面が切り替わった。


 次にテレビの画面の中に映ったのは、なんとも愛おしい鼻ちょうちんを作って目を瞑りながらいびきをしていた、寝ている猫の姿だった。


 俺は小さく微笑むと、「今日も平和そうで何よりだな。」なんて、つぶやいて、テレビを消した。



 俺、翡翠ヒスイは、誰もいない家に「行ってきます。」というと、外の田んぼの広がる山道に出た。


 山道といってもちょっとは整備されてはいるのだが…


 俺は新潟県の糸魚川というところに住んでいるのだが、俺が住んでいるところは今、ど田舎でゲームセンターやショッピングモールが何一つとしてない。


 今日はとりあえず学校なので、高校1年生の俺はいつもの日常を過ごすとしよう。


 そうそう。ここには楽しみはほぼゼロと言っていい。


 でも、なんにもないこの地域でも、俺には楽しみなことがある。それは…


「よっ!ヒスイ!」


「よー、楓史フウシ


 こいつの名前は風神楓史カザカミフウシ


 俺はこいつとの何気ない、緩やかな日常が好きだ。


「はあ。俺の書いてる小説まじ伸びねーな」


 フウシはまず最初に愚痴のような話を、世間話のように話題に出す。


 フウシは趣味が小説の執筆で基本的に家に帰るや否やいっつもパソコンと向き合っているらしい。


「はは。確か名前って…」


「〔俺とアイツの日常論〕だよ…」


 フウシは俺との日常を小説にして書いているらしいが、まあ、伸びないのも納得はできる。なんだって、俺ら以外に誰もこの面白さをわかる奴なんて、そうそういなさそうだしな。


「何それ。恋愛ものかよ」


「なんでだよ!」


 俺は少し口角を曲げた。


「なんか、アイツって言ってるところがそれっぽい」


 ちなみに、俺の住んでいるここら辺の地域には、本屋だけが存在していて、唯一の俺らの居所となっている。


「はあ…誰にも注目を浴びないのかあ…日常物って」


「そろそろ異世界系にしたらどうなんだ?」


「異世界系ねえ…」


 ちなみに俺は漫画を読んだりは基本的にせず、普段は小説を読んでいることが多い。(漫画もほどほどに読む)


 その中でも、俺が読んでいる作品は異世界系が多く、いうのであれば「SAO」「オーバーロード」「転スラ」などをいつも読んでいる。


 もちろん。そんな俺が、「異世界転生してぇ〜」など思っていることは言うまでもない。


 まあ、死ぬのは嫌だし、スライムになったり骸骨オーバーロードになったりするのも嫌だから、異世界転生はフィクションまでにしてほしい。


 俺はそんなことを考えながら、フウシの話を聞き流しながら、信号を渡った。


「あ、危ねえ!!!!」


「え?」




 すると、急に目の前が真っ暗になる。


「あれ?俺、もしかして死んだ?」


 俺はなんとなく暗闇に向かってそう呟いた。


『作用、其方は今、トラックに轢かれ死んだのだ』


 暗闇から俺の呟きに返すように俺に誰かが話しかけた。


「あれ?もしかしてこれって神様の声?」


『否。私は自然の結晶体だ。自然のパワーによって召喚され、魂の手助けを…』


「あー、そういうのいいから。とりあえず俺をここに呼んだ理由。教えて?」


 もしかしたら、もしかあるのかもするのかもしれない。


 そう思って俺は少しばかり胸をワクワクさせながらも、強引に話を進める。


『其方は子供に近い年齢に無残な死に方をした。なので、貴様の望みを叶えてやろう』


「あ、へー。ありがとうございます」


 俺は少し驚く。


 俺は異世界に転生とかではなくて、願いを叶えるというジーニーのようなこと

をしてくれるらしい。


 まあ、一度死んだ身だし、異世界転生でもしようかなとも思った。


 別に前の人生に残す未練も何もない。


 家族も、祖父や祖母、両親を含め、全員があの世へと行ってしまった。


 だが、一つだけ懸念があった。


「あの」


『なんだ?』


「風神楓史ってわかりますかね?多分俺と一緒にトラックに轢かれてると思うんですけど」


『風神楓史か…少し前にそんな奴もいたな。貴様同様に早死にするもんだから、哀れに思えて願い事を一つ聞き入れてやったぞ』


「ちなみに、どんな願い事だったんですか?」


『剣と魔法の世界へと再び生まれ変わることを所望しておった。』


「やっぱり…」


 アイツことだ。


 絶対ライトノベルとかにあるような世界にするとは思ってはいたんだが、まさか、そのまんまとはな。


「じゃあ俺も同じ世界に行ったりすることはできますかね」


『ああ、できるぞ』


「それじゃあ、それでお願いできますか?」


『もちろんだとも。貴様の願い、聞き入れた』


 自然の結晶体?はその言葉を強く、響く声で言うと、俺は目の前の暗闇から、少しの光を感じた。


『それでは、幸運を。ここからは私には何もできん』


「ああ。ありがとう。神様」

 俺はそう呟くと閉じていた、瞼を開く。


 開いた眼には、青い空がいっぱいに広がっていた。


「うおお…すげえ…」

 俺は瞳いっぱいにその青空を取り込んでいた。


 そんな時、俺の上に何かが被さった。

「うぶぶぶぶぶ!!!!」


 俺は表にしてみると、何かを記した書類のようなもので、紙の中の一番上の欄には「個体名」と書かれていた。


 その紙にはこう書いてあった


 個体名 ヒスイ

 種族  エルフ

 ステータス

 体力 ⭐︎

 幸運 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 能力値 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎

 スキル 黒板


「スキル黒板?」


 なんだこれ


 見たこともないぞ??


 とりあえずチュートリアルみたいなのがしたかったが、到底この世界にそんなものがあるとは思えない。


 とりあえずスキル発動とか思っておけばいいのか?


 まあ、やってみる


「スキル、発動!!」


 何も起きなかった。


 なんだこれ?


 まさかクソ雑魚能力なんじゃ…


 その時、俺は何かの気配を感じ取り、後ろを見ると、なぜか空中に白いミミズのような、糸のような細い何かが浮いていることに気づく。


「これって…」


 白いミミズのような物。その正体は何かの線のようだった。

「え。これってまさか…」


 とりあえず試しに…


「…」


 俺は黙って猫の姿なんとなく頭の中に描き出す。


 すると、先程、目の前にあった白い糸のようなものが目の前に空間に刻まれていく。


 そして、しばらく経つと、俺が想像したのと酷似した「猫」の絵が描き出される。


「ま、まじか…これって…」


 それはただ、動くとかもなく、猫が出てくるとかでもなく、


「絵」という存在でしなかった。


「もしかして俺の〔黒板〕って能力って空中に文字を書くとかだけなのか…!?!?」


 異世界転生して、俺の無双伝説が始まるのかと思ったら、こんなスキルじゃ…こんなスキルじゃ…



「クソザコじゃねええええかあああ…………!!!!!!!!!!!」







後がき

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