秘密のいとこ

神逢坂鞠帆(かみをさか・まりほ)

第1話

 どうやら私には、生き別れの兄弟ならぬ生き別れのいとこがいるらしい。

 生きがいとも言える長編小説の朗読を聴き終えた。そこで、冗談半分に言ったのである。

「私にもこの小説みたいに生き別れの兄弟でもいればいいのになあ」

 テーブルに飲み物を置きながら、柳原創やなぎはらつくるは簡単に言った。

「まあ、兄弟はいないにしても、いとこはいるよね」

「はい?」

 私の表情にビクッとする恋人。

「あの…。ジジ…」咳払い。「セダカ君がおっしゃってましたよ。ひいらぎには、男のいとこがいるのだと…」

 そろりそろりと後退るツクツク。ガシッと手首を掴む。

「詳細を聞かせろ」

「はい…」

 大体、何故、ツクツクごときが知っているのか。腹立たしくは思ったが、横に置いておく。

「ほら、この家に柊が使っていない三味線があるだろう」

「うん」

 頷く。

「お前がいとこの存在に気付いたら、あの三味線を届けにいきなさいという、セダカ君からのミッションなんだよ」

「何それ…」両手を頬に当てる。ツクツクがまたもやのけ反る。「何それ、何それ、楽しそう!」

「ちょっと待ってね。セダカ君に連絡してくるから…」

 ワクワクが止まらない。マイ三味線でロックばかり弾きまくったので、ツクツクは始終嫌な顔ばかりしていた。でも、私は気にしなかった。

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