週に一度の早起き

@rona_615

第1話

 アプリを開き、明日の予定をチェックする。水曜日だから一限目から講義がある。週に一度のこととはいえ、いつもより一時間半も早く起きなければならないのは、ちょっぴり憂鬱だ。明日は授業中に演習をやるから、万が一でも遅刻したら、時間が足りなくなってしまう。

 だったら早く寝れば良いものの、ついノートを開き、内容をチェックしてしまう。先週は式の導入までで終わったところ。ここからゴールまで、結構かかりそう。

 そのままゴロリとベッドに寝転がり、再びスマホを手にとる。メールと掲示板には新しいものはなし。SNSを眺めては、惰性のように画面をタップする。

 明日の朝、起きるまで、あと六時間。

 そういえば、食パンを切らしてるんだった。冷凍ごはんはあったっけ?

 暖かい布団を抜け出すのは苦行みたいなものだけど、朝ごはんがないのも別のそれ。一人暮らしには慣れたものの、こうした些細な出来事に、実家で甘やかされてきた自分を省みる。

 冷凍ごはんは切らしていたけど、うどんがあったからOK。ネギと卵と麺つゆで、ちゃんとした朝ごはんにはなるだろう。

 買い物リストに『食パン』と入力。ついでにアラームもセットして、スマホを充電スタンドに放り投げる。

 電気を消して、目を閉じる。どうか、ちゃんと起きれますように。


 スヌーズ機能を満喫してから、慌ててベッドを飛び出す。四十五度のシャワーで無理やり目を覚まし、髪を乾かし、五分でメイクを済ませる。

 予定通りレンジ調理した冷凍うどんで朝ごはんを済ませ、歯を磨き、トイレに行く。

 玄関を出るときには、つい「一限、イヤだー」とぼやく。

 全く、いつまで言ってるんだか。


 大学まで行く途中に買ったコーヒーを流し込めば、準備はOK。忘れ物がないか確認し、講義室に入る。

 教卓から、全体を見渡してみると、やっぱり空席が目立つ。一番後ろで突っ伏したままの男子は、来ている意味があるんだろうか?

 時計を確認し、チャイムに耳をすませる。音が鳴り終わると同時に、私は口を開いた。

「じゃあ、授業を始めます。前回は……」

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