ションドル・カポール
若宮菜藍
第1話
ゆっくりゆっくり、僕が作られていくのが、生まれる前からでも分かった。
白い光がパッと消えて、繋がる紐がチョキンと切られた。
瞬間、温かい何かに包まれてふわっと体が浮いた。心地いい。手だ。
僕は君から生まれたんだろうか。
輝いた瞳で僕を見てくる。
周りを見てみると、周りには僕の仲間らしき輩がたくさんいた。色が違ったり、大きさが違ったりするけど、きっと僕の仲間だ。
「アジャーラ!」
「はい!」
「できたの?」
「は、はい」
「じゃあ休まず早く次のだよ。…ん?」
「あ…」
うわああ!
次は全く心地よくない固く冷たい手に掴まれた。
痛い痛い!
引っ張るな!
「ふーん…初めてにしては上出来じゃないか」
「あ、ありがとうございます」
「今日はあと30枚ね。少ないんだから早く終わらせて、他の手伝いなよ」
「30枚…30…あ、はい!」
急に宙に浮いて、どさっと仲間の上に打ち付けられた。
うわああ!痛っっ!
うう…
『痛いよ…』
『ねえあんまり詰めないで!』
『うるせえよ!』
至近距離に仲間たちが押し詰められて苦しい…
みんな上から積み重ねられていくのか。こうして集められた僕たちはどこにいくのだろうか。
すると、僕の上からまた仲間が宙に舞って落下してきた。
うわああああああああ
おっ、重い!
『お前、ここじゃねえよ!お前はベルベットなんだからあっちの高級な方だろ!』
『そんなの知らないですよ…急に投げ入られたんですから…』
『早く退けよ!』
これは…大変になりそうだ…
上に重なるベルベットの隙間から、手が見える。
『おっ、ほらお迎えが来たぞ』
『よかったです…』
すると、僕のお尻が急に摘まれて上に逆さま吊りにされた。
えええ僕!?
嫌だあああ
一体何をされるんだ!?
あれ?温かいぞ…この心地よさは
僕を作ってくれた人だ。
すると、身体を優しく曲げられて、彼女の衣服に入れられた。
それから、しばらく記憶が飛んだんだ。
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