🍎

 

「へぇ、いいじゃん。あとで俺にも食べさせてよ」


「うん。美味しいの作っとく」


 先輩の、声が好きだ。骨抜きにされてるなって思う。

 芯をくり抜かれ、内側から熱を帯びている私はリンゴとおんなじだ。


「せんぱーい! 早くこっち来てくださーい!」


「おう! いま行くー!」


 後輩の女の子に呼ばれ、先輩は振り返って手を挙げた。


 「じゃ、また後でな」


 声だけを残して、先輩は焼きリンゴから離れていった。


 私は手を振ってお別れする。

 サークルのみんなが知っている。昨日から付き合い始めた2人だ。

 

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