妬きリンゴ

橘 静樹

妬きリンゴ

 

 今日から私は、焼くのをやめる。


 サークル合宿でバーベキューで、私は持って来たリンゴを金網の上で焼いていた。

 大事な熱が逃げないようにアルミホイルでしっかり包んで、シナモンシュガーの甘味がじんわり染みていくように。


「おっ、何それ? 何つくってるん?」


「焼きリンゴ。甘いものもあった方が良いかなって思って」


 先輩に話しかけられて、うれしい。

 私の甘い、そして少し酸っぱい気持ちなんて全く知らないんだろうなと思う。

『上手に隠してるもんね』と目の前の、アルミホイルに包まれたリンゴに心の中で話しかける。

 

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