第18話 河合クラン


「クラン?」

「そうだ。俺のクランだ。加工屋もショップも階層転移もユニークスキルだらけのクランだよ」

 河合は自信に満ち溢れていた。

「ん?だから俺たちと一緒に行かないってこと?」

「行く必要がないからね」

「は?あんたどんだけタクマに世話になったと思ってんの?」

 タマキが叫ぶと、

「それはそれ。俺はクランでトップなんだから」

 ん?それがどうかしたのか?

「んじゃクランでダンジョンを攻略していくってことか?」

「そうだ。だからそんなに頑張らなくてもいいんだよ?今も一つ攻略して来たところだから」

「へぇ、凄いじゃないか!これからもお互い頑張ろうな」


「ちがう、邪魔なんだよ。俺らがダンジョンを攻略するんだから」

 河合は気持ち悪い笑みを浮かべて言う。

「ダンジョン産業に一番乗りは逃したが、これからは河合クランの時代だ!」


「気持ち悪いな」

「あーしもあそこまでバカだとは思わなかった」

「見損ないましたよ」

 タダスケもタマキもユカリもそう言うが、

「なんだ、じゃあよろしく頼むよ」


「「「「「「えっ!?」」」」」」


「だってダンジョン潰してくれるんだろ?」

「お、おう」

「なら任せればいいじゃないか」

「いや私達だって先にやってきたんだし」

「いいよ、そんなの」

「タクマ?貴方はそれでいいかもしれないけど私達のプライドが許さないの」

「そうよ!あーしだって横からチャチャ入れられると頭にくるし」

 カグヤとタマキは怒っているがなんで怒ってるんだ?ダンジョンを潰してくれるんだからいいんじゃないかな?


「みんな、少し冷静になろう」

 タダスケがみんなをまとめる。

「河合、俺たちは河合がやることに口出ししないが、それでも邪魔か?」

「ダンジョンには限りがあるでしょ?それを踏まえて邪魔だって言ってるんです」

「河合、ダンジョンはまだ無数にある。スタンピートが起きれば大災害だぞ?」

 タダスケの言ってることは正しいが、

「そんなの絵空事でしょ?まずは起こってから対策を考えればいい」

「起こってからじゃ遅いから今から対策をするべきなんだよ」

「分かりました、それじゃあその対策を任せますよ。俺たちはダンジョンを潰して行けばいい」

「馬鹿だろ?俺たち六人に何ができるって言うんだよ」

「馬鹿っていうなよ、こら?お前らが邪魔だって言ってんだから大人しくダンジョンから手を引けばいいんだよ」



「ダメだ、平行線だな。俺たちは出来ることをやるだけだ」

「辞めないならそれなりの覚悟をしとくんだな」

 どうしても独り占めしたいようだな。

「上等だこの野郎」

 タダスケが1人で突っ走っているが、みんな同じ考えのようで睨み合っている。

 はぁ、河合をパーティーから除名する。

「河合は今後頑張ってダンジョン潰ししてくれよ?俺たちは俺たちでやるから」

 俺が言うと河合は笑顔になり、

「タクマは残れよ。俺のクランに入れてやるからさ」

 握手を求めてくるがその手を握ることはしない。

「なっ!テメェは何言ってんだ!」

「ふぅ、タダスケ、大丈夫だから。俺は俺だからお前のクランには入らないし河合もパーティーから除名したぞ?」

 驚愕の顔でスマホを見る河合は、

「クソッ!覚えてろよ!絶対後悔させてやるからな」

 と言って去って行った。


「うーん、なんか俺らに恨みでもあったのかな?」

「いけすかないやつ!」

「あんなやつにあーしらが負けるわけないっしょ」

「自分も負けたくないです」

 ユカリ、タマキ、シンジはそう言うが、

「なんか俺たちの邪魔をしたいだけみたいな気がするのは俺だけか?」

「それは…私のせいもあるかも」

「ん?」

「私が河合の告白を断ったから」

「なんだそれ?ただのガキじゃねーか」

 そんなことのために?

「あー、あーしも断ったわ」

「え?」

「実は私も」

 ユカリもタマキもフったらしい。

「誰でもいいんかい!あいつのプライドちっちぇーなぁ!」

 

「んで?どうする?」

「まぁ、このまま普通にしてみようか?何かして来たらその時は倍返しにすればいい」

「そうね」

「まぁ、なんかしてくる根性なんかないでしょ?」

 それならそれでいいけどな。

「んじゃいつも通りで」

「「「「「はい」」」」」


 次の日は秋葉原とだけ伝えてその日は別れた。


「やってくれたよ、秋葉原は封鎖されてる」

 タダスケから連絡をもらい行ってみると人が入るスペースが無い。

「ちょっと通して「ダメに決まってんだろ」は?」

「ここは河合クランが攻略中だ!」

「あーしがあいつらぶっ飛ばしてくる」

「ちょっとタマキ待てって」

「はぁ、昨日の会話が聞かれてたみたいだな」

 しょーがない。

「今日はやめにしておこう、チャットなら大丈夫だろう?」

「そうね、ちょっと悔しいけど」

「あーあ、来て損したわ」

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