第6話 クロガネ推参


 なんだかんだ言い訳がましいが、俺はダンジョンにいる。

 しょーがないじゃん!

 こんだけスキルなんかも取り放題だしショップで買うのに金貨が欲しいし。


 21階層、サンダーウルフを斬ってはこいつの落とす雷のカケラを集めている。

 ・雷のかけらを集める 56/100

 って、こんなヒントが出て来たらやるよね。

 サンダーウルフはすばしっこいが、単調な動きだから楽でいい。

「おらっ!」

 雷のかけらと魔石を無限収納にいれてまた場所を移動する。

 無限に敵は湧いてくるが、探すのが大変なんだよな。マップ片手に倒せるほどサンダーウルフは弱くないし。

「あー、早く出て来てくれないかなっ!、ってとうっ!」

サンダーウルフはドロップ品になった。


 あー、早くたまんないかなぁーー。



「クロガネ一尉ぃー!」

“ゴッ!”

「いだっ!」

忠輔ただすけ、声がデカい!」

「はい…それよりも前に出過ぎです!いくらクロガネ一尉でも囲まれたら大変ですから」

 ようやく7階層までこれたクロガネ達は意気揚々と斬っては捨てて行くクロガネに追いつくだけで精一杯だった。

「お前たちが遅すぎるんだよ」

「そんな、この重装備見てわかんないんですか?」

「私も変わらないがそれがいいわけにはならないだろ?」

「じゃあ僕らにも敵を回してくださいよ!レベルが上がってないんですから」

「それじゃ別行動をだな…できないか」

「そうです!団体行動なんですから少しは融通利かせて下さいね!」

「チッ!」

「あ!今舌打ちしました!このクソ上官が!」

「あ?誰に向かってそんな口聞いてんだ?」

「あんたですよ!ダンジョンの事になると目の色変えて自分のレベルばかり上げているあなたにです!」

「うっ!それはだな」

「わかったらこちらに回してください」

「わ、分かった」

 クロガネはレベルを上げるために色々考えていた。


「こっちのダンジョンにですか?」

『あぁ、夜の間だけでいいんだが』

「まぁこちらはいいですが」

『そうか、ならば今からそちらに向かう』

「えっ?」

 ドアチャイムが鳴りクロガネ一尉がドアの前に立っていた。

「夜分遅く申し訳ない!それではよろしく頼む」

 綺麗な礼で一瞬息が止まる。

 クロガネはどこからどう見ても大和撫子という言葉がピッタリの綺麗な女性だ。

 その女性が夜な夜な自宅に来る事になって少し期待してしまうが、

「ダンジョンはキッチンか?」

「はい、とりあえずお茶でも?」

「いや、私は早くレベルを上げたいのだ」

 鑑定で見てみると、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 黒鉄 輝夜クロガネ カグヤ29歳

 レベル22

 スキル 初級剣術

 ユニーク 電光石火

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「今何階層くらいですか?」

「いや、いまは7階層を攻略している」

「え、まだそんなところ」

「なに!拓磨殿は今どこなのだ?」

「あ、あぁ…25階層です」

 クロガネはショックを受けたようにフラフラとしながら座り込んでしまう。


「なぜだ!一回の攻略に時間がかかるだろうが!」

「あ、あの階層移動と言うアプリがありまして」

「ずっるーい!ずるだぞ!拓磨殿!」

 これが素なのかと思い笑えて来た。

「これが俺のユニークですからね」

「くぅー!それがあればレベルが上がるのだな?」

「まぁ確かに上がりはいいですよ?」

「だろうな!ズルだからな」

「ズルではないでしょう?」


「ぃ、いまレベルは?」

「61ですね」

「61!!最強じゃないか」

「いや、こっちも必死にあげてるんですよ?」

 そんな簡単にここまで上がって来たとは言い難い。

「私も上げるぞ!まずは8階層に連れて行ってくれるか?」

「はいはい」

 クロガネをダンジョンに送らなくてはならなくなった。


「あははは!このモンスターめ!」

 クロガネは8階層で無双している。

「あ、ははは」

 クロガネさんは戦闘狂なのか?

「いや、レベルがこんなに簡単に上がると楽しいもんだな」

「どんだけ自衛隊で鬱屈としてるんですか?」

「あいつらはレベル上げの邪魔なのだよ!私は早くレベルを上げたいのにだ!」

「団体行動なんだからしょうがないんじゃないですか?」

「ふふふ、それにしてもここはいいな!」

 毎夜この高笑いを聞かされるのかと思いちょっと凹むわ。


「これなら10階層でも大丈夫だろ?」

「あぁ、大丈夫だと思いますよ?」

「なら行こうではないか!」

 クロガネに掴まってもらい10階層に足を運ぶ。


「寝ていてくれていいからな!」

 と走って行くクロガネさん。

「寝てられるわけないでしょ」

 しょうがないから後をついて行く。

 うぉ!モンスターハウスに突っ込んでいったぞ!

「クロガネさん大丈夫ですか?」

「あははは大丈夫だとも!私はこれくらいじゃ、グフッ!やられはしない」

「いまグフって言ってたっすよね?助けに入りますよ」

 助けに入ると満身創痍のクロガネさんが現れた。

「クフフフ!これだ!これをまっていたんだ!敵も強くなっているじゃないか!」

「そりゃそうでしょ?」

「やりがいがあるじゃないか!」

 あー、頭のネジが一本取れているな。

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