祖父の遺産を相続したら許嫁を自称する美少女たちから迫られるようになったけど、一体誰が本物なんです?
りんどー
第1話 クラスメイトの人気アイドルと連絡先を交換した。
「おはよう! わたしとけっこ……じゃなくて、まずはお友達から始めませんか!」
「はい?」
九月四日。始業式から数日遅れて、二学期初めての登校をした朝のことだ。
教室の扉を開けた俺の前に、教卓の周りで話していた女子の一人が近づいてきて、唐突なことを言われた。
女子の名前は
クラスメイトなのでたまに挨拶を交わすことはあるけど、ほとんど絡みはない。
そして、俺と鈴白さんが今、やけにクラスメイトたちから注目を浴びている原因は、この二人の組み合わせが珍しいから、ってだけじゃない。
鈴白さんが、大手事務所に所属する人気急上昇中アイドルグループのセンターだからだ。
黒髪ロングの正統派美少女で、「顔面偏差値八十以上」「史上最高の美少女」なんてメディアで評判の、十七歳現役女子高校生アイドルだ。
校内では誰もが知る存在であることはもちろん、世間的な知名度も高い。
若くして女優としても活動中で、まさに今が売り出し中の芸能人。
「鈴白さんが、俺と?」
「うん、変かな?」
「変というか、不思議だ」
正直、そう思っているのは俺だけじゃないだろう。
人気アイドルの鈴白一華に対して、周囲から見た俺……
特別背が高いわけでもイケメンなわけでもない。どちらかと言えばガサツな、メガネをかけた、ただの同級生。
誰が見ても不釣り合いな組み合わせだ。
「わたしも華の女子高生だから。クラスの男の子と仲良くなって、青春する権利はあると思うんだ」
「だったら、俺以外の誰かでも」
「そこはほら。わたしが興味あるのは、鏑木くんだから」
鈴白さんは平然とそんなことを言ってのける。
アイドルらしい爽やかな笑顔だ。
「だとしても、もう少し時と場所を選んだ方がいいと思うけど」
売り出し中のアイドルだったら、男子生徒と関わりを持つにしても、もう少し他人の目を気にした方がいいと思う。
これではまるで、あえて人に見せつけているようだ。
自分はこの男子生徒と特別な関係だ、と。
「んー、溢れ出る気持ちが抑え切れなくてつい……なんちゃって」
あざとく舌を出して見せる姿が様になって見えるのも、人気アイドルの特権だろうか。
普通の男子高校生ならこの時点であっさり籠絡されていそうだけど、今の俺は人一倍警戒心が強い。
特に、同年代の異性に対して。
「今まで、そんな素振りを感じたことはなかったけど」
「うん。だから今から始めよう! ってことで、スマホ出してー」
「スマホ?」
「連絡先交換しよう! まさかダメなんて言わないよね? わたしたち、クラスメイトなんだし」
ここで異性としてではなく級友として申し出てくるあたり、逃げ道を潰すのが上手いな。
とてもじゃないけど、断れる雰囲気じゃない。
クラスメイトたちは全員会話をやめて聞き耳を立てているか、露骨にこちらを見ている奴までいる。
この状況で友達になりたいと言ってきたクラスメイトの申し出を断るのは、同じクラスで学校生活を送る上で色々と支障がありそうだ。
平凡な男子高校生だと認識されている俺が、人気アイドルである鈴白さんの申し出を断るなんて何様のつもりだ、とか言われそうだし。
とにかく皆、人気アイドルと同級生男子のスキャンダルに期待していた。
「……分かった、交換しよう」
「やった!」
俺とラインのIDを交換した鈴白さんは、小さくガッツポーズしていた。
このアカウント、クラスラインに登録されているアカウントとアイコンが違う気がする。
クラスラインのは学校用で、こっちがプライベート用ってことか?
この分だと、仕事用のアカウントとかもありそうだな。
「ありがとう! じゃあ、また連絡するね!」
目的を達成したらしい鈴白さんは、友人たちの輪の中に戻っていった。
さっそく、質問責めにあっている。
それは俺も例外じゃなかった。
「ちょっと悠真! 君、鈴白さんとどういう関係なんだい? ま、まさか付き合っていたり……」
「これは詳しく話を聞かせてもらう必要がありそうだな?」
親友である
まあ聞かれたところで、俺と鈴白さんとの間に詳しく説明するような関係なんて存在しない。
しかし、急に美少女が近寄ってくるようになった原因には、心当たりがある。
こうなったのは全て、あの変わり者の爺さんの遺言のせいだ。
俺は今、祖父の遺産を賭けて、初恋の相手を探すゲームに参加させられている。
◇◇◇
お久しぶりです&初めまして、りんどーです。
準備に時間がかかってしまいましたが、久々に新作を投稿していきたいと思います。
カクヨムコン期間中は基本的に毎日朝7:18更新、場合によっては複数話更新していきたいと思います!
次回は新たなヒロインの登場とゲームに参加することになった経緯についてのお話です。
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