家族には、秘密。

芒来 仁

第1話 弟の場合

 夕食後のリビング。我が家の暴君である姉がテレビ前のソファに陣取り、俺と父親はダイニングテーブルでスマホを見ている。そんな俺たちに愚痴りながら母親がキッチンで夕食の後片付け。どこにでもある、家族団らんの風景だ。

 けれど、ひとつ違うこと。

 俺には秘密の力が宿っているということだ。

 去年、俺はあるラノベを読んで衝撃を受けた。

 作中に登場する少年は、ある時唐突に「自分に潜む力」に気付く。それを読み、俺も気付いたのだ。自分の内に潜む力に。

 俺の力はまだ目覚めたばかりで、まだ明確な力を顕すには至っていない。しかし数々の書物(ラノベ)にあたることで、自分の力を具現化させようと密かに努力している。

 念のため、自分の力を封印する指輪も手に入れた。最初は百均で見つけたクロスのペンダントを使用していたが、我が家の押し入れの奥に封印されていたチェーンクロスの付いた指輪を最近になって見つけたのだ。我が家にあったことを考えても、俺の力を封じるにはちょうどいいだろう。

 そういえばしばらく前、近所の公園で爆発事故があった。現場を確認に行ったが、事故処理後でも少し地面がえぐれていた。もしかして俺と似た力を持つ連中が戦ったのだろうか? 自分の力が発現出来るまでは用心した方が良いかも知れない。

 あくまで秘密裏に。俺の力は、世間に知られてはいけない――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る