変地街

梨田洋一

始まりの章

「ねぇ、やっぱりやめようぜ?」

僕は恐ろしくなって細い声で、でも必死に頼んだ。

まさか、こんなことになるなんて思いもしなかった。


 今日はクラスのみんなで肝試し♡の約束で、僕はこの街一番の心霊スポット「為佐連神社」に向かった。

 この「為佐連神社」というのがまたよくわからないが恐ろしい伝承を積んでいるので、僕たちクソガキたちにとってはいい肝試しスポットだったりするのだ。

そんなこんなで夜になり、「為佐連神社」に到着するとまず、不気味な雰囲気が僕たちを迎え入れた。怖くなった僕達臆病者は

「やめようぜ…。」

「無理無理…。帰ろうぜ。」

なんてか細い声で必死に頼んだ。でも、クラスの中でも悪ガキ中の悪ガキ、西郷たちはそんな雰囲気を気にせず、

五月蠅いやかましい。」

なんて言って、ずんずんと闇に入っていく。僕のような臆病者も、一人で帰るなんて堪ったもんじゃないので、恐る恐る西郷達についていく。

 やがて、森を抜けて小さい境内にたどり着くと、僕はやっと帰れると思ったのも束の間、突然西郷が

「賭けをしようぜ。じゃんけんで負けたやつがここの神社の中から重要そうな物を持って帰る!どうだ?こんなのでビビってるやつはいねえよな?」

なんて言い出したもんだから、みんな無理に盛り上がっちゃって、「やろうやろう!」なんてなったもんだ。それで、じゃんけんをしたら、まさかの僕が負けてしまい、神社を漁ることになった。何も持って帰るわけにもいかないので、仕方なくお社を物色していると、なんだか古そうな箱が出てきたので、これを持って帰ることにした。みんなのところに戻ると、

「スゲーじゃんお前。」

とか

「やりゃできんじゃねーか。」

とか言って褒めてくれたのが、妙に嬉しかった。

 そのまま西郷の家に向かい、箱を見ると、

『昔暴れたりしものを封印せる箱、な開けそ』

との文字が入っていて、お札みたいなものが張ってあった。だけどみんなそんなものお構いなしにお札をべりべりと破り、箱を開けた。すると、巻物と一本の棒切れみたいなものが出てきた。

 だがその巻物を見た途端、周りの連中は絶句した。いや、声が出せないどころか、俗に言う金縛りの様な感覚で、声が出せないのであった。絵巻物の中には、蜘蛛のような体をした鬼が、人々を喰っている絵とともに、最後の一文に

「人の精気を吸ふもの。開けば皆死ぬるまで追ひきたり。」

の一文が出てきた。恐ろしくなってきて、僕達はその箱をゴミ捨て場に捨てた。

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