第5話「日常」
焔炎真
焔吉乃
焔輪廻
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春夏秋冬、季節は過ぎて炎真と吉乃の間に生まれた“輪廻”はすくすくと育っていった。
ただ、吉乃がそれ相応の年を重ねて行くのに対して、炎真は見た目や体内の年齢を重ねることが殆ど無い。出会った頃に合わせて、見た目は術で自身を変化させていた。
❖
輪廻は、二歳の男児で炎真と同じ黒髪と赤い瞳を持って生まれており。
愛らしい造形は、母親の吉乃の面影を思わせる。
ある日、炎真と吉乃は輪廻を連れて近くの公園に来ていた。
「お母しゃん、お父しゃ~ん!」
輪廻が滑り台の上で二人に笑顔で、手を振っている。
輪廻は滑り台から滑って来て、下で待っていた吉乃に抱き着いた。
「お母しゃ~、お腹空いた~!」
「あらあら、それじゃ今日は、輪廻の好きなオムライスにしましょうね」
「チキンライスのやつがいい」
「はいはい」
「では、吉乃。俺はつまみに塩辛とビールを一本付けてもらおうか」
炎真が吉乃に言うと、輪廻が舌を出しながら父の炎真に言う。
「だめっ、お母しゃはぼくの~。お父しゃんはジュースでも飲んで!」
「コラ!輪廻」
炎真が軽く叱るふりを見せる。
「わー、お母しゃ~。お父しゃんが怒ったよお!」
輪廻がべそを搔きながら吉乃の陰に隠れた。
「ほらほら、輪廻?お父さんに優しくしなきゃ、でしょ。それと男の子はすぐに泣いちゃ駄目だよ」
「はぁい」
「あなたも、一本とか言って昨日は、二本飲んでいたでしょ。飲み過ぎは体に毒よ」
「しかし、吉乃。酒は俺の命で」
「もう、その命のお酒で寿命縮むわよ。今日も一本だけ付けるから」
「……はい」
父子で吉乃に頭が上がらない炎真と輪廻。
夕方になり、しばらく輪廻は同じ年くらいの子達と遊んでいたが。周りの子供達が親に連れられて帰る頃に炎真と吉乃は、輪廻と手を繋いで帰って行く。
「蛙が鳴くからか~えろ」
「輪廻、帰ったら飛行機のプラモデル作ってやるからな」
「うん!ありがとー。お父しゃん」
その時、突如突風が吹いた。
すると、炎真達の目の前に黒いローブを被った男が現れ、炎真の前にひざまずく。
「閻魔大王様、お迎えにあがりました。今すぐ、冥府へお戻りくださいませ」
「えっ、突然現れた……この人誰?炎真」
そして、輪廻は目の前の男に何かを感じ取ったように震えだした。
「怖いよー、お父しゃん、お母しゃん!」
吉乃は不安そうに炎真を見つめ、震えている輪廻を抱き上げる。
「誰だ?貴様は」
この感じは明らかに地獄からの使者ではない。
男自身が、隠しきれていると思い込んでいる黒い殺意を炎真は感じ
炎真は吉乃と輪廻を後ろに隠して守り、硬い表情をし、口を真一文字に結び、目の前の怪しい男を睨んだ。
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