第11話

「まずひとつ。ターナーに関してなんらかの断罪を行う事をしないと、この場で約束してください」


「ソ、ソフィア様…」


 ターナーは驚きの表情で私を見た。それに対して私は笑顔で返事をする。これまで私を支えてくれたターナーの立場の保証こそが、なにより今の私にとって大切な要素なのだから。


「べ、べつにターナーになんのうらみもありはしない…それなら大丈夫だとも…」


 簡単に私の言葉を受け入れたその背景には、きっとエリーゼの顔を浮かべたのだろう。本当にこの人はエリーゼが関わると素直だ。


「では、もうひとつの条件ですが、」


 公爵は大変不機嫌そうなお顔をされているが、私は構わず続ける。


「これからシガー伯爵に会いに行くので、一緒に来てください」


「シ、シガー…」


 公爵の表情が一瞬曇ったのを、私もターナーも見逃さない。やはり伯爵令嬢であるルリアさんの不自然な死には、この人が関わっているようだ。


「わ、分かったよ…一緒に行こうじゃないか…ついて行くだけでいいというのなら」


 …断ってくれれば伯爵を説得する材料の一つとなったのだけれど、そう上手にはいかないか。ここで断れば、やはり自身がルリアの死に関わっていると、自白しているようなものとなるから。


「だ、だけど今日はもう遅い。夜道を馬で駆けるのは危険だ。い、行くのは明日にして欲しい…」


 …見え見えの時間稼ぎだ。しかし確かにこの男の言う通り、このまま全力で伯爵家まで向かっても、到着するのは深夜だろう。馬で夜道をかけるのは危険な上、もう眠っているであろう伯爵を叩き起こす事になる。これから手を組み共に戦いましょうと交渉に行くのに、それでは最悪の印象だ。


「ソフィア様、私もそうなさった方が宜しいかと思います」


 ターナーは冷静に私にそう言った。私はそんな彼に同意することとした。


「分かりました。明朝、出発しましょう」


 私たちは公爵家へ戻り、明日に備えて準備をした。不思議なことに、戻ってから出発するまで、一度もエリーゼに会わなかった。性懲りも無く、また公爵に私の告げ口でもしているのだろうか。

 朝、私たち三人は伯爵家を目指して出発した。

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