不動明王恐ろしや

永嶋良一

第1話 悪魔

 梁塵りゃうぢん秘抄ひせう巻第二・四句しくの神歌かみうた・二八四


 不動ふどう明王みやうおう恐ろしや

 いかれる姿にけんを持ち

 さくを下げ

 うしろに火焰くわえん燃えのぼるとかやな

 前には悪魔あくま寄せじとて

 降魔がまそう



 現代語訳(「完訳 日本の古典34 梁塵秘抄」、小学館)


 不動ふどう明王みょうおうは恐ろしいことだ。

 忿怒ふんぬの姿に利剣りけんを持ち、

 羂索けんさくをさげ、

 背後には火炎が燃え上がるとかいうことだな。

 前には悪魔を寄せつけまいというわけで、

 すさまじい降魔ごうまの相をしている。


〔不動明王〕いっさいの鬼霊や煩悩を調伏すると信じられる神。五大明王のうちの最高のもの。密教で大日如来の教えをとり行う使者として信仰された。


〔剣〕右手に利剣(鋭い剣)を持つ。知恵の象徴。


〔策〕左手に羂索けんさく(末端にかんなどをつけた一種の策条)をささげる。衆生を降伏こうぶく摂受しょうじゅする象徴。


〔火焰〕迦楼羅かるらえんという火災。毒龍を食う火翅かしちょうを表す。


〔悪魔〕仏道を妨げる悪徳神。


〔降魔〕降魔の相。悪魔を降伏させる時の怒りの形相。

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