第28話 貴様らを全員ぶっ殺す!!
呂布はすぐさま、地面に横たわる麗華の元に駆け寄った。
「無事か……?俺の声が聞こえるか?」
苦しそうに顔をしかめる麗華の唇がわずかに動いた。
「温侯……」
ほとんど声は聞こえないが、唇の形でそれと分かる。
(温侯……? 俺をそう呼ぶのはこの世界でただひとり……貂蝉だけだ!)
呂布はこれまで、最期の瞬間に愛馬が目の前で葬られるさまを見るより悲惨な経験はないと信じて疑わなかった。だが、それは間違いだったと思い知った。目の前で愛する女が血だらけで横たわっている。呂布は泣いていた。人生で初めて流す涙は、とめどなくあふれ、いくらぬぐっても乾くことはない。
「麗ちゃん!しっかりして!!」
「社長…っっ!」
もはやアイクとジェイソンは絶叫していた。
「おのれ~!!!!!」
呂布は両腕を動かして拘束を振りほどいた。
「貴様ら、全員あの世に送ってやる!」
殺気をみなぎらせる呂布の背後に稲妻が降りそそぎ、地獄からはい出てきた鬼のような様相を呈していた。呂布の気迫に恐れおののいた傭兵たちは、じりじりとあとずさる。逆に呂布は一歩ずつ間合いをつめていく。
もはや誰もが「生け捕りにしろ」という命令を忘れていた。わが身を守りたい一心でやみくもに発砲を始める。だが銃があろうと、なんの助けにもならない。ある者は発砲する前に呂布に投げ飛ばされた。よしんば発砲しても強靱な甲冑に阻まれるため、傭兵たちの攻撃は無に等しかった。
「お前たちの力はこの程度か?」
呂布が息を荒げながら周囲を見渡す。要領のいい傭兵が、レーザーチェーンで仕留めようとしたが、チェーンを発射する前に呂布に奪い取られた。呂布がレーザーチェーンを振ると、ヒュンと高い音を発し、空に銀色に光る弧が描き出されていく。その弧は近くにいた傭兵を正確にとらえ、その身体を切り裂いた。切り刻まれた傭兵の姿を目の当たりにした者たちは、一様に震えあがっている。
呂布は素早く身体を回転させ、胡隠に向かってチェーンを振り下ろした。幼少期から厳しい訓練を受けてきた胡隠は、おのれの戦闘能力には相当の自信を持っていたが、この三国第一の戦神のするどい眼光に射すくめられ、足がすくんでいた。
光のチェーンが毒蛇のごとく胡隠の腰に巻きつく。呂布がチェーンを引いた瞬間、胡隠はわずか一瞬にして胴体を切り裂かれた。「あ…」という声と共に、胡隠の瞳から光が消える。かたや呂布は攻撃の手を緩めない。次から次へとチェーンを振るい、敵に致命的な一撃を加えていく。そんな中、傭兵たちは、なすすべもなく呂布の攻撃が止まるのをただ待つしかなかった。
ついにチェーンのバッテリーがつきたが、呂布の怒りの炎は、とどまるところを知らない。
「ひとり残らず殺してやる!」
叫んだ呂布は、落ちている銃に目をとめ拾いあげる。
「これはなんだ?」
呂布は、冷たく重い金属の武器の構造をつぶさに観察する。見たこともない形ではあったが、引き金や銃身、その先の銃口を指で丁寧になぞるうちに、その寒々とした感触から、弓矢に通じる何かを感じていた。
呂布は、この道具を使っていた傭兵たちがどういう動きをしていたのかを思い出しながら、逃げ惑う敵に銃口を向けた。そして引き金に当てた指をゆっくりと引いてみる。一筋の閃光が空間を切り裂き、目の前の敵がうめき声をあげて倒れた。弓とはまったく違う武器だが、的を狙う正確さには寸分の狂いもない。一発で敵を仕留めた呂布の心に、これまで味わったことのない達成感が広がる。
「かつて
喜びもつかのま、呂布は重傷を負ったレッドと貂蝉のことを思い出し、気を引き締めた。再び銃を構えると、機械的に敵を撃ち倒していく。やがて周囲に立っている敵はいなくなった。呂布は銃をおろし、大股で麗華に歩み寄る。
「呂布、後ろ!」
ジェイソンが叫ぶ。口元に笑みを浮かべた王中が、呂布の背中に銃を向けていた。
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