嘘遊記1 七蜘蛛の学園惨殺事件

唐未夢が通っていた学校の外に、7人のナース服を着た女性が1列で並んでいる、彼女たちの真ん中に白衣の男が混ざっていた。

「先生~本当にここで合ってますか?」7人の看護師は同じ容姿をしている。雪のような白い顔に血のような赤い唇、そして細いウエストがあらわになっているツーピースのセクシーなナース服を着ている。

彼女らの違いはアイシャドウの色にしか見分けがつかない。

赤・橙・黃・緑・青・藍 ・紫、姉妹の中で一番上色は赤で、一番下の色は紫、姉妹の順番は虹の色の順と同じになっている。

「間違いない、ここからにも三蔵法師の肉の匂い漂ってくる、本当に食欲をそそるな、これは。」男は小さな黒縁の眼鏡をかけ、長い黒髪をオールバックにしてまとめている。

「ねぇ、先生、今回は私たちが最初に見つけましたから、私たちが多くもらっても問題ないですよね?」オレンジ色のアイシャドウをしている次女がそう言った。

「前回の時、私たちは指1本ももらえないから、今回は手のひら1本くらいもらえないと嫌ですわ」黄色のアイシャドウの三女がそう続いた。

「ならば今回は私たちが全部頂こう!骨の1本も残さず全部頂こう!」医者の目からは欲望が満ちている。

暴食の欲望だ。

…………

教室で唐未夢は成績証明書を受け取り、この成績ならば間違いなく一流大学に入学できるんでしょう、しかし彼女には当分進学する予定はなかった。

「未夢、本当に進学するつもりはないの?」クラスメイトの結奈は未夢に尋ねた。

「うん、できれば 私は早く仕事をしたいな。」未夢の優秀な成績を見て結奈は羨ましく思っている。だがそんな彼女はいち早く社会人になりたい。

自分自身で自分の面倒が見れるようになるため、自分の身は自分で守る、そう思う彼女は生活に役立つ料理や裁縫技術もそれなりにできるようになっている。

「やっぱり経済的な問題なのか?でも君の場合は政府から援助がもらえるでしょう。」 結奈は未夢の境遇についてよく知っている、彼女は捨てられた孤児であり、宗教団体の世話を受けて育った。

「あいう援助は他にもっと必要な人がいるんでしょう、私はもう大人だし、自分の面倒くらい自分で見れなきゃ。」 未夢は他の誰かに頼りたくない、彼女には誰も頼らず自分で生きられることを望んでいた。

だが彼女はまだ知らない、彼女の運命は千年以上前から仕組まれたものて、何度生まれ変わっても操られたままだ。

「ところでさ、今日の講堂に健康診断のために有名な病院から医師と看護師が派遣されましたけど、その健康診断に未夢も行くの?」 未夢が通ってる学校はごく普通なんだが、急に有名な病院から健康診断の協力を申し出された。

「健康診断ってお金かかります?」無料とか割引みたいなお得なものに未夢は絶対見逃さないタイプだ。

しかしこの世界にタダより高いものはありません、そういう些細な利益を求め続けると逆に他の人の獲物になったりするかもしれない。


…………

学校の講堂にて

健康診断のために学生達は7列に分かれて、順番を待っていた。行列の先に天井から地面まで吊り下げられた大きな白いカーテンがぶら下がっている。

「えーそんなに人が並んでるの、みんなそんなに健康を大事にしてるんだっけ?」異常なほどに並んでいる人数に未夢は驚きを隠せなかった。

「なんか病院側から生徒の状況によってストレス解消の薬を出してくれるって、その薬は勉強にも役立つらしい」結奈はそんな不思議な薬に興味津々だ。

「だったらテスト前に処方してくれよ!」それを聞いた彼女はちょっとだけ呆れた。

「試してみる?」その薬をもらうには特別な行列に並ぶ必要がある、結奈はその行列に並ぶ気だ。

「後にしようかな、その前にちょっと寄っていきたいところがあるからさ。」そう言い残し未夢は講堂から離れ、今日は彼女にとって学校に残る最後の日だ、彼女は最後に自分のお気に入りの場所で思い出に浸るつもりである。

そこは学校の屋上、未夢の一番お気に入りの場所だ。彼女はここにいると自由を感じることができる、青い空を眺めながら、鳥の飛ぶ姿を観察し、それにここでは高みに立って下の風景を見下ろすこともできる。

「あれ、あの男で朝の時にぶつかった人だよね。」彼女は校門の前に立っている男に気づいた、あのヘッドバンドと白のタンクトップ、とても印象深い服装しているので、彼女は自然に覚えていた。

「ほほう~いい腹筋してるんですね」彼女は頬を赤らめて笑みを浮かべながらそう言った。

「あー!まずいこっちに向いた!」 男の視線から避けるために彼女は反射的にしゃがんでいた。

「もしかして私の後について学校まで来たの?ストーカーなのか?まさか私に一目惚れをして...」彼女はバレないように頭をちょっとだけ出して覗いていた。

「なんでそんな怖い顔してるんだ...もしかして私にぶつかれたことに恨んでいるのか、ケチな男だな。」未夢はその男にじっと見つめられていた。

「あーまずい!学校に入ってきた!どうしよう...もし捕まれたらそのまま処刑されたりして、でもここ学校だからさすがにそんなことしないよね」未夢は手で顔を隠し、自分の妄想の世界に浸っていた。

「とりあえず結奈にそれを伝えて、それから逃げよう!」未夢はよく独り言を言う子だ。

未夢はすぐ講堂に戻り、7つの長い行列はまだまだ長く続いていた、だかさっきまでの雰囲気と全然違う。

「このカーテンの色は白じゃなかったっけ?どうして赤色のカーテンに変わったの、明かりも消したりして。」離れたからたった15分、彼女の目に映る講堂はさっきまでと全く違うように映った。

薄暗い講堂、ぶら下がっている血のような赤いカーテン、その裏に大きな影が蛇のように蠢いていた、生徒が一人ずつガーディの裏に入って、裏に入る人はいるか、出る人はいなかった。

「こ...これってどういうこと...ねぇ、君何か知らない?」未夢は前にいる学生に尋ねていた。

その学生は未夢の質問に反応しなかった、催眠にかけられたようにただゆっくりとカーテンに向かって歩いていく。

「なんなんだこれは...どいつもこいつもおかしくなっている」未夢はあたりを見渡し、全員の顔が虚ろいていることに気づき、まるで生きた屍みたいだ。

その時に彼女は赤いカーテンの真実に気づいたようだ...

「あれってもしかして...血?」巨大な影が舞いながら人を噛みちぎった、残った半分の体が高いところから落ち、血がカーテンに飛び散り、純白のカーテンが赤く染めていた。

「ゆ...結奈...」この光景を目にした彼女、正しい選択は一刻も早くここから逃げることだか、彼女の親友は地獄に向かう行列に並んでいるはずだ。

彼女は講堂の中を歩き回り、操られた人間の中に親友を見つけようとしている。

「げげげげ~こいつも違うか、でも味は悪くなさそうだな。」ガーデンの裏では何人かの女性の声がした。

「こいつは脂っこくて臭いですわね、全然食べるには向いてないわ〜」 どうやらその声の持ち主たちがこの事件の犯人だ、そいつらが今、食べ物を選別している。

「それにしてもこんなに時間が経つのに、まだ三蔵法師見つからないの~あの子は一体どこかしら~」 そいつらの目標は三蔵法師だ、学校中の生徒を皆殺しにしても、見つけ出すつもりだ。

「結奈!あんなところに行くな!早く私と一緒に逃げよう!」 行列の真ん中くらいで未夢は結奈を見つけ、もうちょっとしたらカーテンに着く距離だ。未夢はすぐにその手を掴んだ。

「いい匂い...あそこからいい匂いがするよ...」うつろな目をしている結奈、彼女は未夢に強引に引き戻された。

「バカ!いい匂いなんてあるわけないでしょう!近づいたら危ないよ!」未夢は全力で彼女を引き戻そうとしている、カーテンから滲み出した血がすでに彼女の靴まで来ている。

「あれれ~どうやら香りに惑わされていない可愛い子ちゃんがいるわね、先生の薬が効かないのかしら?」カーテンの真ん中の隙間から緑色のアイシャドウをしているナースが姿を現した。

「まずい!見つかってしまった...結奈!お願い早く私と一緒に逃げて」未夢は血まみれのナースを見て慌ててそう言った。

「そうね、仏に守られた三蔵法師じゃない限りはありえないでしょね。」ガーデンの右側から青色のアイシャドウをしているナースが続いて出てきた、その唇の周りには血が付いている...

「ああ!いい匂い!!」それに釣られたように、突然結奈から力を強めて、ナースに向かっていた。

「なにが三蔵法師よ...小説の読みすぎか!」未夢は両手で結奈を掴み、それでも結奈の進みを止められなかった。

「今回の三蔵法師は女子高生なのね~いいわね、食欲がそそりますわ~」カーテンの裏からどんどん同じ顔のナースが出てくる。

「何の話しだ、私は三蔵法師じゃないよ!私の名前は唐未夢だ!」真ん中にいた緑色のアイシャドウをしているナスがどんどん近づいてくる。

「唐未夢でも、三蔵法師でも構わないわ、あなたからはとっても美味しそうな匂いがするわ、あなたのこの匂いは千年の間、一度も忘れたことないわ~」 赤いアイシャドウをしたナースのおへそから蜘蛛の糸が吹き出て、あっという間に結奈を捉えた。

「この子も美味しそうですわね。」オレンジ色のアイシャドウのナースが結奈の左手を噛みちぎった。

その反動で未夢はバランスを崩し座り込むように倒れていた、親友の血は彼女の身にも飛び散った。

「いやぁ!結奈!」ナースたちは彼女に激しく噛み付き、結奈はナースたちによってバラされて、恐らくにも唐未夢同じ結末が待っているだろう。

「味は悪くないけど~三蔵法師の肉に比べれば、まだまだですわね!」紫のアイシャドウのナースが唾を垂れながら未夢を見つめていた。

「三蔵法師の肉はもう私たちのものよ」7人のナースが未夢に群がるように向かっている。

「ゆ。。。夢だ、こ...これはきっと悪い夢なんだ...」震えている未夢は立つことすらできず、座り込んで、お尻と手のひらも地面の血で濡らされている。

「え~そうですわ、これは夢なのよ、痛いのは一瞬だけ、そうして18年後、またお会いしましょう~げげっげ~」赤いアイシャドウのナースの下半身が蜘蛛の腹に変化し、腹の下に更に4つの蜘蛛の足が生えてきて、上半身にもさらに二本の手を増えていた。

蜘蛛の精、それこそがナース達の正体だ。

「これは夢じゃないぞ、これは2000年も続いてきた苦しみだ!お前が今ここで目を閉じたら、この苦しみはずっと続いていくだけだ!」

「あ...朝の時の人。」未夢は男を見つめ、男の目には怒りが溢れている。

「また貴様か、孫悟空!」他の六人のナースも一斉に蜘蛛の正体を現した。

「孫...悟空?」

「よー!お師さん、君の弟子が助けに来たぞ!」

18年ごとに、孫悟空は必ず三蔵法師のそばに行く、そして今回も以前と同じように...

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