ポンコツ天使に振り回される!

しちめんちょう

ポンコツ天使に振り回される!

突然だが、今目の前に天使(自称)がいる。


俺、おにつかりゅうは大学に入ったはいいものの、顔の怖さとガタイのよさによってビビられ、コミュ障も相まって友達も出来ずぼっちになってしまった。


そんな俺が大学のベンチでぼーっとしていたところ、天使(自称)が舞い降りてきた…というか落っこちてきた。


「いででで…」


強く打った腰をさすりながら、彼女はそう言った。


「あのー、大丈夫ですか?」


俺がそう聞くと、彼女は「これも、計算のうちよ!」と言っていた。頭がわるそうである。


彼女が言うには、天界から見ていて俺があまりにも可哀想だったから助けに来てくれたらしい。


「あなたのために、とっておきのものを持ってきたわ!あなた、恋人欲しいでしょ?」


「いや、楽しく趣味の話ができる男友達がいいです。」


「欲しいわよね、こ・い・び・と」


圧がすごい。


俺のメンタルが強かったら、男友達がいいと言えたかもしれない。


だが豆腐メンタルの俺はその圧に屈してしまった。


「ほ、ほしいです、、、」


「そうよね!そう言うと思って、ジャジャーン!キューピットの矢を持ってきたわよ!」


彼女は古びた矢と弓を持っていた。


「なんですか、それ」


「この矢に射抜かれた人は1日だけあなたのことが大好きになってしまうのよ。その1日でやるところまでやっちゃいなさい!!」


「いや、コミュ障には厳しすぎますし効果が切れた後のことが怖すぎますよ。要らないです、それ」


「で、誰が好きなの?気になってる子くらいいるでしょ?」


「ちょ、話聞いて、、、」


この天使はもう俺の話も聞いてくれないみたいだ。





「ふーん。あの人ねー。」


好きな人を言わなかったらめちゃくちゃ泣きわめかれたので、結局教えてしまった。


「あの人がきよはらしずさん。いつも静かに本を読んでいて、お淑やかなのがなのがいい。」


「よーし、私に任せなさい!エイムには自信があるの!」


彼女はそう言って弓を引き始めた。ここから清原さんまでの距離はまあまあ遠い。


「あのー、もうちょっと近くでやりませんか?」


と、俺は提案してみたが無視されてしまった。


「おりゃっ」


彼女が放った矢は、清原さんに当た……らずに横を通り過ぎてその後ろを歩いていた女性に当たってしまった。


エイムに自信があると言っておきながらこのザマとは。俺の方が上手いんじゃないか?


そんなことを考えていたら、矢が当たった女性がこちらに歩いてきていた。


「どうすんの天使さん…って、いねぇ!?」


あのクソエイム天使、逃げやがったな!


「あの、ちょっといいかな?」


「は、はいぃ、」





今、俺はオシャレな喫茶店にいる。


目の前には、うちの大学の氷姫と呼ばれている、さんが座っている。


クールな超絶美人で、何人もの男が話しかけに行っていたが撃沈していた。聞いた話(盗み聞きした。友達いないからね!へっ)によると男嫌いらしい。


そんな美人が俺に話しかけてくるとは。


あの天使はポンコツだったが、キューピットの矢の効果は絶大だったらしい。


「あのさ、、、」


「ど、どうしたの氷見谷さん?」


「あの時、助けてくれてありがとう!!」


「あの時?」


彼女の話によると、彼女はもともと田舎に住んでいて大学に入るタイミングで東京に移住してきたらしい。


そして初めて来た東京で道に迷ったあげく、男2人組から声をかけられてどうしようか迷っていたところ、俺が2人組を追っ払ってくれた、ということだった。


まあ本当は、助けた方がいいのかな?どうしようかな?と思いながら見ていたら、相手が睨まれてると勘違いして逃げていっただけだけどね。


「本当はその場で言えたら良かったんだけど、ちょっとコミュ障で、あと顔怖くて」


「やっぱり俺の顔って怖いのか…。」


「で、でも!大学で真面目に話聞いてるし、おばあさんの荷物が重そうだからって声かけてるの見たし、顔が怖いからって言う理由だけで職質されても嫌な顔せず対応してたし、そういうところ優しいと思います!!」


俺の負のオーラを感じ取ったのか、氷見谷さんはそう言った。いい子である。


でも「職質されても嫌な顔をせずに対応する」はフォローになっているのか……?


「それで、そんな鬼塚くんのことがす、すきでしゅ。つ、付き合ってくだひゃい!!」


「え?」


今、好き、付き合ってって言った?


「男嫌いじゃなかったの?話しかけた人全員返事してくれたことすらないって」


「いや、コミュ障で普通にしゃべれなかっただけです」


ってことは本当に俺のことが好き!?…って思ったがそういえばこれはキューピットの矢の効果だった。


ちょっと嬉しかったのに、、、残念。


あの堕天使は「やるとこまでやれ」と言っていたが、こんな優しい子にそんなこと出来ない。


「ごめん」


「そ、そうですか…」


見るからにシュンとなって、顔が( ´・ω・`)になっている。


「でも、明日もまだ俺の事好きでいてくれるなら明日もう一回告白してよ。そしたらOKするからさ」


そういうと氷見谷さんは勢いよく顔を上げ、


「本当ですか!?約束ですよ!!」


と言ってきた。


もちろん約束した。


まあでも明日になったら、なんであんな男に告白したんだろうと思うことだろう。



翌日



「約束ですよ!付き合ってくれますよね!!」


「あれーー?」


話が違うんですけど、天使さん?





結局いろいろあって、夕奈さんと付き合うことになった。


今は、夕奈さんと一緒に楽しいキャンパスライフを送っている。


話すきっかけ、付き合うきっかけをくれたのは間違いなくあの堕天使なので、一応お礼は言っておこうと思う。


ありがとう天使。あんまり感謝してないけど。





〈天界にて〉


私の名前はエン・ジェル、天使である。


顔コワ男の恋を成就させた、できる天使なのだ。


キューピットの矢が狙った人に当たらなくて逃げ帰ってきてしまったが、やはり矢の効果は絶大のようで、まあ何とか計画通りに進んでよかった。


「やっぱり、キューピットの矢を考え出した先人は偉大だわ…!」


そんなことを考えていると、友達の天使ちゃんに会った。


「エンジェルちゃん、なんか嬉しそうね」


「そうなのよ!聞いて、天使ちゃん…」


そう言って私が成就させた恋の物語を少し誇張して話した。


「え!?エンジェルちゃん、キューピットの矢を使ったの?」


「うん、それで矢が狙った人のところに寸分違わず」


「キューピットの矢の効果は、昔の噂好きな天使が流したウソで、本当は何の効果もないってことを授業で習ったじゃない!エンジェルちゃん、授業きいてなかったの?」


「………………え?」





〈おまけ〉


「あのキューピットの矢に、効果なんてなかったらしいわ、、、ごめんなさい」


またあの天使がやってきたから何事かと思ったら、なんと謝罪されてしまった。意外と真面目なんだなこいつ。


「まあ、夕奈さんが今も俺の事好きって言ってくれるのはキューピットの矢の効果がまだ切れてないから、とかじゃなくて良かったよ。」


「お詫びに新しい道具を持ってきたわ!」


「新しい道具?」


「そうよ!この『 恋する気持ちフエフエール』よ!」


そう言った彼女の手には、いかにも怪しそうな薬品を持っていた。


「それどうやって手に入れたの?」


「なんか天界にあるお店に入ったら『 本当は10万円するけど3万円で売ってあげるね』って言って売ってくれたわ。友達はやめとけって言ってたけど7割引なら買わない手はないわ!」


この天使、すぐに詐欺とか引っかかりそうだな。


心だけは天使らしくピュであるらしい。

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