第4話
セイラに言いたいことをすべて吐き、部屋から追い出した二人。その表情はやりたいことをやきりったかのような色調で満たされていた。
すべて思惑通りに事が運んだ。僕は愛するレリアの肩を抱き寄せながら、勝利の祝杯を上げていた。
「すべ狙い通りね、伯爵様♪」
「ああ。本当に家出をされたことだけは想定外だったけれど、君の機転のおかげでより面白いことになったというものだよ♪」
セイラがその姿を消したときはほんの少しだけ焦った。しかしその裏でレリアは根回りをすでにしており、セイラの居場所を突き止めて自分のもとに呼び出し、僕との再会の場を整えてくれたのだった。
「それにしても、婚約破棄を告げてやった時のあの表情…(笑)」
「ええ、きっと心の底から絶望しているに決まっているわ。なんとか表情に出さないように頑張ってたところが、なんだか健気でかわいかったもの」
どうせセイラは、少しの間家出をすることで僕の気を引きたかったのだろう。今まで全く愛情をかけられなかったからこそ、僕の前からいなくなることで自分に構ってもらうつもりだったと見える。それはつまり、僕との婚約関係を心の中では望んでいたことを意味する。こうして僕から婚約破棄を告げられてしまったことで、レリアの言った通りその心の中では、深い後悔と絶望の思いが渦巻いていることだろう♪
「それで、いつ婚約破棄は嘘だったと告げるの?」
レリアは自分の頭を僕の首元に寄せながら、そう問いかけてくる。その色っぽいにおいにくらくらとしながら、僕は頭を回転させ言葉を紡ぐ。
「そうだな…。もう少し引っ張って、楽しんでからでもいいんじゃないか?最高のタイミングでこの婚約破棄が嘘だったと告げた時、それこそセイラはこの僕に心酔し夢中になることだろう。なんといったって、自分が一度は諦めさせられた婚約が再び自分の所へ帰ってくるのだからな。これほど彼女の心を動かすものなど他にはあるまい?」
その時こそ、僕にとって最も都合のいい婚約者が誕生する。どれほど僕が自分に好き勝手なふるまいをしようとも、決して文句など言ってくることもないだろう。それほどにこの僕に恩義を感じるはずだからだ。
「あーあ、早く告げてあげたいけれど、それじゃあ面白くないものねぇ…。でも引っ張り続けても効果が薄れてしまうだろうし、難しいわぁ(笑)」
言葉でこそそう言うレリアだけれど、間違いなく彼女も僕と同じ思いを抱いていることだろう。その口調は意気揚々とした感情を隠してはいなかった♪
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