日記 2
彼とはたくさん話をした。
小説のこととか、学校のこととか。
そのぜんぶが楽しくて、私にとっては宝物だ。
……なぁんて書き方をしたら、なんか私の人生終わっちゃうみたい(笑)
けど小島くんと過ごした時間はとてもたのしかった。
それは間違いない。
小島くんとは、これからどうなってしまうのだろうか。
私の小説の師匠である小島くんとの関係性は、この『人体模型の子』の完成によって、終わってしまうのだろうか。
「これでおわりだな」
なんて言われてしまうのが、私にはとても怖い。
小説はもうじき完成する。
小島くんとのパイプは、これでなくなってしまうのだろうか。
そんなのは、いやだな。
小島くんともっと話したいと思うのに、もうこれ以上かかわりたくないとも思ってしまう。
彼から「小説でお前に教えることはなくなった」と言われてしまったら、私はひどく傷つくからだ。
そんな痛い目に遭いたくないから、私は彼に会いたくない。
本当は会いたいのに、会いたくない。
なんか不思議な感情だった。
きっと恋人とかできたら、こんな気持ちになってしまうんだろう。
会いたい。ケド、嫌われるのが怖いから、会いたくない。
私は踊っている。まるで踊り子だ。
自分の気持ちを明確にできない哀れな踊り子。
自分では踊ってるつもりでも、本当は踊らされてるだけなのに。
あー、なんにせよ。小説は完成してしまう。
もう悔いはない。ベストは尽くした。
これを、お父さんに見せたら、お父さんはどんな反応をするんだろうか。
怖い。不安だ。ケド同時に、なぜか楽しみでもある。
不思議だよね。小説を読んでもらうときって、必ずそういう感情がついて回る。
不安。だけど、わくわくする。
その人がどんな感情をくれるのか、とか、わからないからこそ、面白い。
傷つくかも知れない。ケド、ぶつかりに行きたい。
これも、恋に似ている。
私の……今の気持ちと似ている。
小島くんがくれた、居心地のいい場所。
私はそこに、もう一度座ることができるんだろうか。
喫茶室の窓際。私の一番好きな席。
できることなら、まだ、あの席に座っていたい。
何度だって、あの店に行きたい。
私は、北沢あかねは、小島洋太のことが好きだ。
もう、隠すつもりはなかった。
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