氷属性すぎる北沢さんは小説家になりたい
相沢 たける
プロローグ
北沢あかね、という女の子について語りたいと思う。
いやなぜいきなり、という向きもあるかも知れないが、これから起こる出来事の数々には、北沢あかねが大分面積を占めているからだ。
北沢あかねは一部の女子からは、王子様、とか呼ばれるタイプの女の子だ。
背丈はふつうなのだが、スタイルが異常にいい。
そして小さくて可愛い顔。
この二つがあって、女子からモテないわけがない。
もちろん男子からも人気がある。
だが北沢あかねには彼氏はいない。
それは周知の事実であった。
なぜか。
北沢あかねは告白されると、とてつもない塩対応を見せるからだ。
ある日の放課後、バスケットボール部のキャプテン(イケメン)が彼女に告白すると、北沢は容赦なく「興味ない」ときっぱりと断った。
バスケ部のキャプテンクンは、三日間、練習に参加しなかったという。
哀れだと思うが、そもそも北沢の性格をもともと知っていたのに、告白するバスケ部キャプテンも問題である。
もちろん北沢は、男子女子問わず塩対応だ。
クラスメイトにもそう。
男子が世間話風に、「昨日のバラエティ番組、北沢さんみた?」と聞けば、「興味ないかな、ごめんね」と返した。
もうちょっと愛想よくできないのだろうか、とも思わなくもない。
クラスの女子から、「北沢さんドラマとか見るタイプなの?」とか聞かれれば「あんなものなにが面白いのか、よくわからない」と答えた。
そのせいか、クラスメイト達は、みな北沢あかねには近付かない。
近づけないのだ。
あまりにも氷属性過ぎて。
北沢あかねの表情筋は、南極の氷よりも硬くて冷たい。
教室ではいつも、ハードカバーの本を読んでいる。
窓際で、だ。
だから異常に、絵になる。美しいのだ。彼女の姿は。
彼女の姿だけは拝もうと、他学年からも見物客がうちのクラスにやってくる始末。
それだけ北沢あかねという女の子は、他を惹き付ける。
本人は寄せ付けないムーブをしているのに、だ。
『北沢あかねは鑑賞用』
いつしかそんな言葉が、男子の間ではいわれるようになった。
かっこよくて美しいけれど、とげがあるから近付かない。
彼女にはしたくないタイプ、というわけである。
たしかに気持ちはわかる。
だが一つだけ言わせてくれ。
俺はこの北沢あかねという女の子に、好意を寄せている、ということだ。
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