彼からの連絡

「山上さん。連絡先交換しましょ。この前のお返しがしたくて。」

 プレゼントをしてから1週間くらい経っただろうか。彼が突然話しかけてきた。連絡先を交換し、仕事終わりにご飯に行くことになった。普段はマスクをつけて仕事をしているため、私は彼の顔を知らないし、彼も私の顔を知らない。今思えば、顔を知らずにご飯行くとはかなり思い切った決断をしたと思う。

 「山上さん、誕生日いつですか?」

 「山上さん、どうしてここで働こうと思ったんですか?」

 「山上さん、嫌だったら答えなくていいんですけど、何歳なんですか?」

 「山上さん、山上さん、」

 かなり質問された。コミュ障だと思っていた彼の勢いに圧倒された。まるで私がコミュ障みたいな返事しかできなかった。帰り際、この前のお返しでバターサンドをもらった。しかもレーズン入りの。「なんで私の好きな食べ物知ってるの?」聞けば、私が他の人と話していたのを聞いていたらしい。今日で彼のイメージが変わった。コミュ障ではない。人のことに興味ないと思っていたが、かなり人のことを気にしながら働いている。彼に喋らせたい。その思いが、彼の本当の姿を知りたいに変わった。

 「山上さんって、テレビ見るんですか?」

 「山上さんって、休みの日何してるんですか?」

 ご飯に行ってから、閉店後に彼から話しかけてくることが増えた。相変わらず営業中は業務連絡以外の会話はない。とことんまじめだ。

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