第53話 ディランとクロウの飲み会

「ディラン様が飲みに誘ってくださるなんて、テラスと結婚してから珍しいですね」


「まぁ、普段はテラスと少しでも一緒にいたいからな」


「あー、今日は、魔王とテラスとミコで女子会だとか言ってましたもんね……。最近多いっすね」


「……女友達(の恋の応援)ができて嬉しいとのことだ」


「ん? まぁ、魔王も友達なんて初めてだって喜んでいたから、いいことっすね!」


「クロウはどうなんだ?」


「俺っすか? 俺はカラス時代から友達はまぁいるっすけど」


「魔王とは、その、友達なのか?」


「まぁ、同僚よりは大切な存在なので、友達なんじゃないっすか?」


「そうなのか……」


「な、なんか変な気を遣おうとしてるっすか? いらないっすよ、そういうの! 最高神様になんか言われたんすか? その、か、かわいいなとか綺麗だなと思いますし、好みな外見だし、性格もかわいいと思いますけど、その、大丈夫っす! 仕事に恋愛は持ち込まないようにするんで!!!」


「む?」


「え?」


「そうか。クロウは魔王が好きなんだな?」


「うわぁああ。墓穴掘ったぁぁ。そうっすよ。好きな子じゃなきゃ、あんなに餌付けしたり触ったりしないっすよ! 会うたびに食べ物食べさせようとしてる変態は俺っすよ!」


「いいんじゃないか?」


「え?」


「別に自分の気持ちに素直になっても」


「え? まぁ、ディラン様もいつもいつもテラスといちゃついていらっしゃいますもんね。おかげで俺がどれだけ……」


「あぁ。テラスが可愛いから、仕方ない。あれだけ可愛いテラスと共にいるのに、頭を撫でたり膝に乗せるだけで我慢している私はすごいと思う」


「そうっすか」


「テラスが可愛いといえば、先日、私の作った料理を膝の上に乗せて食べさせている時に」


 クロウはこの世、惚気を聞かされ続けて眠れなかったとか。


「も、もう、ディラン様の飲みの誘いは断るっす」









「ど、どうでしたか? ディラン様」


「楽しくて、テラスのかわいさを自慢してきたよ」


「そ、そうなんですね。ではなく、クロウ様と魔王さんのほうは」


「クロウは、魔王のことをかわいいと思っている、好みだと言っていた。周囲に気にせず伝えろと言っておいた。私も、テラスがかわいいと思ったら、かわいいというようにしているからね」


「で、ディラン様……ディラン様も素敵です」


「……テラス!」










「ということでした」


「だから、あの翌日のクロウは疲れ切っていたのか」


「え? いつも通りじゃありませんでしたか?」


「さすが魔王さんね。クロウ様のことを良くみているわ」


「な、な!?」


 ディランからの報告を、次の女子会で報告するテラス。

 クロウへの同情以上に、魔王とクロウの恋への期待へ、みんなが盛り上がる。


「ということは、包み隠さずに言ってくれるってこと?」


「た、確かに、クロウはあの翌日から、か、かわいいと言ってくれるぞ」


「「きゃーー!」」


「で、魔王さんはちゃんと褒め返しているのですか?」


「そ、その、クロウも素敵だと返すようにしてはおる……我のような魔王にそんなこと言われて気持ち悪くないかの?」


「それはないと思うわ。だって、テラス(とディラン様)によると、好みでかわいい異性ってことでしょう? それはそう言われたら嬉しいじゃない! 魔王なんて関係ないわよ! 私とテラスだって、元神の使い人よ? そもそも、クロウ様にも羽はあるし、見た目ほとんど一緒じゃない? むしろ、下手な使い人や神よりもかわいいわよ?」


「そ、それは不敬じゃ……」


「どちらにせよ、クロウ様から見て好みの女性と言うことには、変わりありませんから、自信を持って良いと思います」


「テラスも……美しい女神様たちに励まされて、我は幸せじゃ!」


「え? ミコは美しいけど、私、美しいですか?」


「テラス。あんた、地獄に行ってから、健康的な生活になったからか、すっごくきれいになってるわよ? 恋の力かもしれないけどね! ふふふ!」


「こ、恋の力……!」


 魔王を真っ赤にさせようとしていたテラスは、変化球のせいで自分が真っ赤になってしまったのだった。



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