第32話 働き方改革
「……というわけで、地獄をモデルケースとして先行して実験的に改革し、天界、地上全体を通じて働き方改革を進めていきたいと考えました。最高神のお考えはどうだろうか?」
「うーん……今までもいろいろ気になるところはあったんだけど、問題がなかったからそのままにしていたんだよねぇ。めんどくさいから僕は関わらないけど、それでもいいなら自由にやっちゃってー。ディランのことは信頼しているし、地獄で実験してくれてから天界に導入するのなら、大きな混乱もないだろうし、いいんじゃない? 面倒なことを言ってくる神がいたら、僕の名前も出していいよ~」
「ありがとうございます、最高神」
「で、そんなことより、何かあったの? ディランとテラス。空気が前よりも甘々じゃない?」
「最高神! そこに顔を突っ込むと、当てられるからやめた方がいいわよ……あたしとクロウを見なさい?」
「実は、テラスに想いを伝えることができまして、あのときのテラスの愛らしさは私だけの秘密……あぁ、テラス。もちろん今日のテラスも昨日のテラスもとってもかわいいよ」
「ディラン様……あのときのディラン様もとっても素敵でした」
「……」
「……クロウの苦労が目に見えるよ。配置換え……の代わりに、僕は、報償としてポケットマネーでお菓子を贈ろうと思うよ」
「それ、あたしも参加させて! 毎日毎日ずーっとこれを見させられるクロウがかわいそうだわ!」
「テラスが前にいた部署の課題は何だと思う?」
「……絶対的な業務量の多さと神々の業務負担の軽さ……でしょうか? 前上司がアレなので、他の神々の業務負担は存じ上げませんが。また、紙の処理が多すぎるかと思いました。あと、同じ神の使いでも、動物型の者は、神託等の簡単な業務のみとなっている点も気になっていました。簡易な事務的業務は動物型の者もできると思います。また、神の使い人でも、神託や神罰は可能ではないでしょうか?」
「たくさんあるな……まず、問題点を調査していくことから始めようか。地獄もより良くしていきたいからね……。神の使い人の神託か……神々が黙っていないだろうね」
「なぜでしょうか?」
「……使い人と神は同じ人型だろう? 降臨したときに使い人が神のように扱われたら、許せない者が多いんだろうね」
「……クロウ様のように羽を生やしたらどうでしょうか?」
「羽か……クロウのような羽だと、地獄からの使者のようになってしまわないかい?」
「黒ではなく、白にしたらどうでしょうか?」
「白い羽の天界からの使い……いいね。それで素案を作ろう。テラス、手伝ってもらってもいいかい?」
「もちろんです!」
「……このように業務を減らし、業務負担も均等化しました。その後、このように業務に取り組むことにしました。実験的に改革した地獄では、業務に従事する必要のある日が減ったため、休日が増加しております」
「いいねぇ。休みが増えるという実績を見せれば、反対はごく少数となるだろう。じゃあ、天界でも少しずつ進めていこうか。どこの部署からしようか」
「……では、私のいた部署はどうでしょうか? 今は恋愛の神の部署と統合されています。恋愛の神の理解は得られやすいかと思いますし、業務内容等は私が理解しているので、導入は容易かと思います」
「いいね、それでいこう」
「……恋愛の神とのやりとりは、テラスではなく、私がしよう」
「ディラン様。最近の恋愛の神の様子をご存じないのでしょうか?」
「え?」
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「ミコ、今度の休日は空いているかな?」
「恋愛の神、今は業務中です。先ほど送信したデータを確認していただいたら、回答いたします」
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「わぁ……」
「ディラン様はご存じなかったんですね?」
「恋愛の神は、ミコの手のひらの上だね……ミコは嫌がっていないのかい?」
「大丈夫です。恋愛の神が後ろを向いた瞬間のあの顔をごらんください」
「……ほんとうだね。では、試験的な業務改革に協力してもらえるか、ここの部署のみんなに確認していこうか」
「はい」
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「テラスー!」
業務改革の進捗を確認するために、恋愛の神の部署を覗きに来ていたテラスの元に、ミコが駆け寄る。
「ミコ! なにかあったの?」
駆け寄ってくるミコの姿に、何か問題でも起こったかと心配したテラスは、慌てた様子で問いかける。
「違うの! テラスのおかげで働きやすくなったし、そのお礼が言いたくて!」
「その、テラス……さん」
「なんでしょう?」
テラスが振り返ると、今までテラスのことをやっかんだり、見下す発言をしていた使い人たちが集まっていた。
「「「……ありがとうございました!」」」
「え?」
「テラスさんのおかげで、使い人の業務が楽になりました」
「テラスさんが地獄へ異動して、正直、業務がいっぱいいっぱいになって反省していたのですが、そんな我々を見捨てることなく、天界での働き方改革までしてくれて……ありがとうございます!」
「……みなさん」
「みんな、テラスに感謝しているのよ? ありがたく、気持ちを受け取っておきなさい? まぁ、今までのみんなの行動的にテラスが許すことができないって言うんなら、仕方ないと思うわ」
「ミコ……」
「じゃあ、感謝を示して、光り輝く肉のBBQ大会を開催しまーす! ほら、テラスも食べて! 地獄の神の分も持って行っていいのよ?」
「お祭りでしか食べられないと有名な光り輝く肉!! 何で!?」
「お祭りってことで申請して、許可を得たのよ。さぁ、お食べなさい?」
「……みなさん、ありがとうございます。みなさんの言葉に傷ついたのは事実です。しかし、気持ちをこのように表してくれたことを私は忘れません!」
「「「テラスさん……」」」
「私、ディラン様とその、で、デートに行ったときに初めて食べたんです! そのときのディラン様、」
「「「……」」」
「私、クロウ様に同情するわ。光り輝く肉、クロウ様の分も持って行きなさい」
「私の分も」「僕の分も」「私の分も」
「へ?」
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