第4話 夜の通話

 その日の夜更け、僕は家族が寝たあとにお湯をそそいで三分のカップラーメンを食べた。

 濃くて刺激的なしょうゆベースの褐色透明なスープと、ちぢれた麺をつるりと飲み込む。


 飲み込んだのはラーメンだけじゃ無い。胸には消化しきれないもやつきがある。


 あれからカフェで。和花さんが二人の関係を隠すのをやめようと言う提案にあんまりにも困った顔をするものだから、話題を変えざるを得なかった。

 

 だけど僕とすれば間違いは言っていないと思っている。でもやっぱり言わなきゃ良かったかなとも思うのだ。


 悶々としていたら、スマホがピロンと鳴る。メッセージ受信の通知だ。


『遅くにごめんなさい。今から通話できますか?』


 言わずと知れた愛しいひとからだった。

 こうしたやり取りはとっくに慣れたはずなのに、どきんと胸の鼓動が騒ぐ。


『もちろん』


 和花さんから通話開始することになり、たった十数秒をじりじりと待てば着信音が鳴る。


「もしもし」

『もしもし、こんな時間にごめんなさい』

「いいよいいよ。どうかした?」


 早速本題に入る。


『カフェで話したことなんだけど……。わたしたちの関係を明かすかどうかで』

「……いやだったらごめん」


『ううん、わたしも思っていたの。変なこともしていないのに隠す必要あったのかなって』

「そうだね。何も悪いことしてないよ」


『みんなに気を遣い過ぎちゃったかなって、少し後悔してる。でもこのまま秘密にしておけばラクなこともあるし……彼氏がいると妬む子もいたりするから』

「女子校も大変だね……」

『でもね、どのみちこのままじゃ嘘をついていることになるじゃない? それだけはいやだなって』

「そうか。僕も隠すのに君に無理させたくない。だから……」


 夜の通話を経て、僕らはこたえを出した。


『もう隠すの、やめる』

「わかった。何かあったら僕に言ってくれ。何でもするよ」


『なんでも?』

「ま、まさか」


『ふふ、冗談だよ。ありがとう、息吹くん』

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