ネタ系ダンジョン配信者の俺、面白いと思ってひのきのぼうでドラゴン倒したら、最強探索者ランキングで一位になりました〜おかげで登録者爆伸びですが、俺はあくまで動画の面白さで評価されたい!〜
第1話 俺の命を救ってくれたのは、ネタ系ダンジョン配信者
ネタ系ダンジョン配信者の俺、面白いと思ってひのきのぼうでドラゴン倒したら、最強探索者ランキングで一位になりました〜おかげで登録者爆伸びですが、俺はあくまで動画の面白さで評価されたい!〜
蓮池タロウ
第1話 俺の命を救ってくれたのは、ネタ系ダンジョン配信者
【魔法なし】オークをひのきのぼうで倒してみた!【命懸け】
死を決断した頭は意外と冷静で、死に方を決めるためにスマホで調べ物をしていると、こんな
オーク。
ダンジョン庁が定める魔物危険度ランクでC−の魔物に、魔法を使わず、ひのきのぼうで倒す?
再生回数334回。実力のある探索者ではなさそうだ……自殺行為だぞ。
気づけば俺は、その動画をタップしていた。
『笑えない日常を送っている諸君! パンティの隙間からご機嫌よう! おパンティンだ!!』
いかにも一人暮らしの汚いワンルーム。
中性的な声とスレンダーな長身。その耳は、ピンと長い。エルフか。
しかし、その格好は、あまりにエルフらしくなかった。
ド○キあたりで買ったろう、タイツに勇者の鎧が転写された安っぽいコスプレ衣装。
そして、顔には女性もののパンティをかぶっている。彼女の美しい銀髪と対照的に、股間部分には黄色い染みがあって、なんとも不潔だった。
「……本気か?」
こんな防具でダンジョンに潜ったら、それこそ自殺行為だぞ。
……本気なわけがない。絶望というのは、ここまで頭を鈍らせるのか。
ひのきのぼうって、異様に聴き馴染みがあると思ったら、有名なRPGで出てくる最弱武器だ。
それが転じて、いわゆるネタ武器として、武器屋で二束三文で売っているのを、お調子者の同級生が買ってきて、教室で披露。
「お前、バカだな〜」と笑われるためだけの、くだらないもの。
そんな悪ふざけの代名詞をタイトルに使っている時点で、彼女はネタ系ダンジョン配信者で、この動画も
「くだらない……」
この登録者の数だ、大方オークのぬいぐるみでも用意して、それをひのきのぼうで叩いて「勝った!」なんていう動画なんだろう。
だが、動画を消す気力もなかったので、そのまま眺める。
『今日の企画は、このひのきのぼうで、オークに挑んで行こうと思う! 魔法は一切使わない! このひのきのぼう一本で戦ってみせる、 思わず笑ってしまったら、チャンネル登録よろしく頼むぞ!』
『移動中』のテロップと効果音とともに、編集で場面が切り替わる。
現れたのは、一匹のオーク。体長二メートル級の個体だ。
「……ん?」
最近のAI技術の発展で、まるで本物のようなフェイク動画を作ることができる。
しかし、所詮はフェイクなので、魔物の動きが偽物臭いのだが……このオーク、本物だな。背景からして中層か?
……まぁ、だとして、適当に逃げ回っておしまいだろう。
『はい勝ち確ですわあああああ!!』
おパンティンは、ひのきのぼうを振り上げて、一匹のオークの脳天に思い切り振り下ろす。
ぼきん。
当然、ひのきのぼうはあっさりと真っ二つになった。
『えぇっ!?!?』
しかし、おパンティンは、信じられないと目を剥く。そんな彼女のお腹に、オークの大きな拳が突き刺さった。
「っ」
モロ、だ。
目を覆いたくなるくらいの直撃。死ぬほど痛いだろうし、内臓を損傷していたら本当に死ぬから、即刻回復魔法をかけないといけない。
『あふんっだっ!?!?』
すると、おパンティンは、コミカルな悲鳴をあげて、身体をくの字にし、後方に吹き飛んだ。
『ああふぅふぅぅぅぅんっっぇっ!』
そして、お尻から着地すると、情けない声を上げながら、地面をゴロゴロ縦横無尽にのたうちまわる。
重症なら絶対にできない動きだ。効いていないのか? いや、パンティから覗く目は、確かに涙を浮かべている。
「ぶひぃ!!」
当然、そんな隙を見逃すオークではない。倒れ伏せるおパンティンを何度も踏みつける。
見るに耐えない光景……のはずだが、その度におパンティンがコミカルな反応をするので、なぜか見れてしまう。
すると、そんなリアクションに不満げだったオークが、ニタリと牙を剥き出しにして笑った。
オークは、その見た目の印象と違い、知能の高い生物だ。そして、その品性は知能に比例せず、下劣極まりない……特に女性に対しては。
オークの野太い手が、転げ回るおパンティンの腕を掴む。
そして、そのまま軽々とおパンティンを逆さに持つと、自分の右肩に抱え、細い両足を掴んで、ガバッと広げる。
プロレス技の”はずかし固め”に近いな……無理やり大股を広げさせられる、なんとも情けない格好だ。
『ぶひひぃっ』
オークは、こうやって女性にあえて恥辱を与えて楽しむ。オークの危険度には、これ以上の目に合わされた女性探索者の被害も含まれているのだ。
『いやぁ〜んっ、恥ずかしいぃ〜〜〜』
しかし、おパンティンはと言うと、羞恥の色を一切見せない……まぁ、よく考えたら、パンティを被るような人間が、この程度で羞恥を覚えるはずないか。
『……ぶひっ!!』
オークは苛立たしげにおパンティンの胴を掴むと、そのまま地面に叩きつけた。
ごちゃっ、と嫌な音。
『ごふえっ!?!?!?!?』
おパンティンは、パンティの隙間から飛び出さんばかりに目を剥くと、頭を抱えて転げ回る。
「……何をやっているんだ、この人は」
ミミックでもなんでもない。この人、本気で命を懸けている。
危険なダンジョンに潜る探索者なら、当然とも言える。けど、普通はお金や名誉のために命を懸けるものだ。彼女は一体何のために……。
「あ」
『思わず笑ってしまったら、チャンネル登録をよろしく頼むぞ!』
つまり彼女は、画面の向こうの人間を笑わせたくて、こんな無茶をしているのか。
「……申し訳ないな」
だとすれば、今回ばかりは相手が悪すぎる。
俺はこの動画を見終わった後、自ら命を断つんだ。そんな人間が、笑えるはずがない。
……いや、それ以前に、俺って今の今まで、心の底から笑ったことなんてあったっけかな。ああ、本当につまんない人生だったんだな。
『ええいっ、こうなったら、私もやり返してやるっ!』
すると、地面に落ちたひのきのぼうの片割れを拾い上げたおパンティンが、再びオークに突撃する……と見せかけて、俊敏な動きでオークの後ろに回り込むと、ひのきのぼうで勢いよくオークのお尻に突いた。
『ぶひぃ!?』
お尻を押さえながら、うずくまるオーク。
そんなオークの両わきに手を入れると、おパンティンは『うぐ、うぐぐぐっ』と呻き声を上げながら、オークを逆さに持ち上げ、肩に担いだ。
オークの腰巻きが重力でまくれ、グロテスクなモノが露わになる。
……おいおい、まさか。
そのまさか。おパンティンは、オークの両脚を掴むと、ガパッと開脚させたのだ。
『はずかし固め返し、だぁ!!』
「いや、本当に何してんのこの人」
相手は魔物、しかも下劣なオークだぞ。羞恥攻撃なんか効くはずがないじゃないか。
『…………』
現に、カンチョーも大して効かなかったのか、オークはすんとした無表情だ。
対しておパンティンは、その細身で200キロはあるだろうオークを抱えているので、ガニ股白目、口の端に泡をぶくぶく溜めている。
どう見ても、おパンティンの方がダメージ大だ。しかしおパンティンは勝利を確信したように笑った。
『どうだ、オークっ、公共の場で、あられも無い姿になっちゃってるぞっ』
『…………』
オークは全く動じない。
当然だ。ていうか、ダンジョンを”公共の場”って捉え方してる人、初めて見たかもしれない。確かにそうっちゃっそうだよな。
『それだけじゃないぞ。あのカメラ、実は生配信なんだっ。お前の霰もない姿を、わたしの登録者100万人が見てるんだぞっ』
『…………っ』
ん? 今、すこし反応があったような。ていうか登録者334人しかいなんだけど、物凄い嘘ついてるな。
『あ、あそこにいるのは、お前と同じオークじゃないかっ!?』
『ぴっ!?』
今度は、確実にオークが悲鳴をあげた。濁った瞳が泳ぎ、緑色の肌が明らかに赤らみ始めている。
「……おいおい、嘘だろ」
オークが、羞恥を感じている? そんなわけ……いや、今思えば、逆さに担がれていると言うそれなりに危険な状態で、オークはすんとしすぎていた。
もしや、照れ隠しだったのか?
『ほら、お前の友達も、お前の好きな娘も、お前のチ○ポをマジマジと見ているゾォ! これは恥ずかしい、恥ずかしいぞい!!』
『……ぶっ、ぶひっ』
鳴くオーク。その顔は、明らかに羞恥に歪み始めていた。
『ほら、ぶらんぶらんっ、ぶらんぶらんっ』
おパンティンが体を揺らすと、合わせてオークのモノも揺れる。
『ぶひっ、ぶひっ、ぶひっ』
オークの目には涙が溜まり、顔はもう真っ赤いけだ。
『これだけじゃ、すまさない、からね……!』
すると、おパンティンは、横揺れに加えて、スクワットを始めた。
ぶしゅっと音を立てておパンティンの鼻から血が吹き出し、足がビキビキ悲鳴を上げているのが、画面越しにも伝わってくる。しかしそれでも、おパンティンはスクワットをやめない。
そのおパンティンの動きに連動して、振り子のように触れていたオークのモノにも、縦の力が働く。オークの男性器の最高到達点がどんどん上がっていき、ついにその時が来た。
……ぶるんっ!
そんな音を立てて、オークのモノが回転を始めたのだ。
『ほらほらほらほら、チ○ポプロペラになっちゃったねぇ! 恥ずかしいねぇ! 恥ずかしいヨォ!!』
『ぶっ、ぶっ、ぶひっ』
『ほら、どうするオーク!! 敗北を認めたら、チンポを隠してやってもいいが!』
『……ぶひぃっ』
『ああ? なんだって!? もう一回言ってみろ!!」
『……ぶひぶひぶひっ、ぶっひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!』
そしてオークは、これが敗北じゃなきゃ何なんだってくらいの情けない鳴き声をあげたのだった。
おパンティンは満足げに頷くと、カメラ目線でこう言った。
『ということで、ここまで見てくれてありがとう! さて、それでは最後にオークのチ○ポをドアップして、この動画を終えたいと思う』
『ぶひっ!?!?!?」
『チャンネル登録よろしくな〜』
『ぶひいいいいいいいいいいいい!!!!!』
オークの羞恥の叫びと共に、オークの股間がぐんとアップになる。
ぱっぱらっぱらーんという効果音と集中線、”包茎”というテロップが出たところで、動画が終わった……終わった!?
……オークの股間で終わる動画なんて、未だかつて見たことない。酷い下ネタだ。ていうかこれって、ひのきのぼうで倒したって言えるのか?……とにかく、くだらない、くだらなすぎる。
「ふふっ」
……え?
恐る恐る口元に手を当てると、俺の口角は、確かに釣り上がっていた。
俺、笑った……?
……嘘だ、笑えるはずがない。だって俺、今から死ぬんだぞ……絶対笑っちゃ、ダメだったのに。
だって、ここで笑ってしまったら、この笑えない人生はただの序章で、もしかしたら今後は、笑って生きていけるのではないか、なんて思ってしまう。
そんな希望を、一度抱いてしまえば、これから死ぬことが……ああ、クソ。
「死にたく、ない……!」
認めたくなかった言葉が口から溢れ出ると、
死にたくない。生きて、おパンティンの動画が見たい……おパンティンに、感謝を伝えたい!
俺は涙で歪む視界の中、チャンネルのリンクから、”Y”というSNSのおパンティンのアカウントに飛んだ。
「あっ」
そして、固定されたポストを見て、俺の身体に電流が走った。
『スタッフ随時募集中!』
反射に近かった。
俺はすぐさま、このようなDMをおパンティンに送ったのだった。
『給料なんていらないので、スタッフにしてください』
⁂
そんなこんなで、『おパンティンTV』のスタッフになってから、早三年の月日が経った。
その間、『おパンティンTV』のスタッフは俺一人しかいなくて、俺は撮影に必要なものの準備から、カメラマン、動画の編集、経費の管理など、なかなかえげつないワンオペを、学校に通いながらこなした。
幼少期から世界一のダンジョン探索者になるため鍛え続けてきた俺でも、毎日疲労困憊だったが、その頃と比べて明らかに違ったのは、圧倒的な充実感だ。
このままずっと、『おパンティンTV』のスタッフとして生きていきたい。
高校生になって進路のことを考えるようになり、さらに強く思うようになっていたこの頃。
「おパンティンを、引退しようと思っている」
三年前、初めて顔を合わせたファミレスに俺を呼び出したおパンティンに、こう告げられたのだった。
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