異世界に召喚された俺が、勇者としての役目を早々に終えて、持ち前の鑑定スキルを活かして財界を無双するー序章ー

こむぎこちゃん

第1話

「なんで俺が、こんなところまで来なきゃいけねーんだよ……」

 車を運転しながらぼやいたが、それに答える人は誰もいない。

 まあ、答えは自分で分かっているからいいんだが。

 俺は、自分で言うのもなんだがかなりの目利きの宝石鑑定士だ。

 今日は、とある金持ちからの依頼を受け、崖に沿って作られた急カーブだらけの道路を一人、車を走らせていた。

 まあ、こんなところに別荘を構えるくらいの金持ちに呼ばれるくらい、俺が優秀だってことだ。

 うんうん、とうなずきながら自分の自尊心を満たし、休日出勤への不満をごまかす。

 と、その時。


 ――汝、選ばれし者なり


「……っ!?」

 突然頭の中に女のものらしき声が響いて、俺はびっくっと肩を震わせた。

 な、なんだよ、これ。

 俺、今、一人だよな?

 助手席、後部座席、と確認するが、誰もいない。


 ――異界の地で育ちし者よ、我が命に従いて……あれ、なんて言うんだっけ……ってか危ないっ! 前見てっ!


「前?」

 言われたとおりに前を見ると、

 ガッという衝撃とともに――俺の車は空を飛んでいた。

「うわぁぁぁーっ!」

 やばいやばいやばいやばいっ!

 ガードレール、突き破った!

 下は一面、木々がうっそうと茂る森。

 ワンチャン、死なないか?

 いや、この高さは確実に、死――


 ――ああっ、もういい! 召喚っ!


 その声が聞こえると同時に、俺は目をつぶった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る