令和の国のテロリスト

最終決戦

何もかもが凍りついた世界で、二人の男が対峙する。


片方は深緑の制服に身を包んだ中肉中背の少年。


もう片方は白いストールを黒衣の上からかけた大柄な牧師だった。


二人の手には鈍く光る日本刀が握られている。少年の持つそれは黒一色の鞘に納められ、牧師の持つそれは刃紋がのたうつように波打つ。


アスファルトの地面を、爆風で焦げ付いたビルの外壁を氷が覆い尽くしている。


葉が黄色く染まった街路樹の銀杏でさえ、白い氷に閉ざされていた。


だが空では我関せずと言わんばかりに、カラスの群れがコーラスを歌う。


ガアガア、ガア、ガア、ガアガア、ガア、ガア、ガア。


空を暗く埋め尽くす鳥たちが、二人に向かい歓びの歌を捧げる。


「屍肉を喰らわせてくれるのは、どちらだ」


まるでそう叫んでいるかのように。


深緑の制服を着た少年は、黒い鞘から抜いた刀の切っ先を牧師の喉元に向けて構える。


大柄な牧師はのたうった刃紋の刀を、少年の喉元に向けた。


ビルの外壁の氷が溶け、一粒の水滴が地面に落ちていく。


静寂が支配する世界がたったひとつの水音で破られたとき、二人の男は同時に動いた。


死を覚悟した決戦の中、少年の脳裏には今までの出来事が走馬灯のようによみがえっていく。

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