光の勇者として転生した俺は魔王を倒し世界を救う。悲惨な最期をとげた勇者の秘密
雨井 トリカブト
第1話 光の勇者シゲオは転生者
「ははは、貴様が光の勇者シゲオか。よくも四天王を可愛がってくれたな。
わしはあいつらのように甘くない。精々、退屈凌ぎにはなってくれよ」
俺は光の勇者シゲオだ。この世界に来て早20年になる。
とうとう魔王アンデランスとの最終決戦というところまで来た。
ここまで非常に長い道のりだった。俺は過去の記憶を振り返る。
◇◇◇◇◇
俺の前世の名前は布佐茂雄。
ちょっとやんちゃな男子高校生だった。
どのぐらいやんちゃかと言うと、髪の毛を綺麗な金髪にしていた。
毎日、ブリーチ液をこれでもかと言うほどぶっかけ続けた。
テッペンがプリンになるのが負けだとさえ思っていた。
しかも、髪の毛は丹精を込めて育てた立派なドレッドヘアーだ!
ぶっとい髪束は俺のケツに届く程長かった。どうだ、かっこいいだろ?
生徒指導のセンコーには散々、注意されたが無視を続けた。
だが、アイツらもしつこく俺を追い回して注意してくる。暇な奴らだ。
ある日、俺はいつものようにセンコーと追いかけっこをしていた。
エレベーターに勢いよく乗り、振り切るため急いで「閉」ボタンを押す。
その時、俺の自慢のドレッドヘアーがドアに全て挟まり、頭皮ごと持ってかれた。
そして、出血多量により前世の俺は死んだのだった。
その後、俺は転生者というものに選ばれた。
死んだ後の事なんて死ぬまで知らなかったが、異世界転生はもう当たり前らしい。
「布佐茂雄。お主には光の勇者として、この世界を魔王の手から救って貰いたい。」
これは俺が異世界転生の時に立ち会った、神の言葉だった。
何よりも印象的だったのが、神様は非常に光り輝いており、眩しかった。
後光が照らしているとか、そんなんじゃない。
要するに、頭が光を反射しまくっているんだ。
産毛の一本さえ生えることも許されない広大な砂漠地帯。
ハゲもここまで極めると光害になるのかと感心するほどだ。
俺は絶対にこんなハゲにはならないと強い決意を抱いた。
転生してからの俺は、同郷の幼馴染とパーティーを組んだ。
現在、魔王と共に対峙しているのもこの時と一緒のメンバーである。
「シゲオ、前衛は任せてくれ。僕が魔物を食い止める。トドメは任せたぞ。」
アレキサンダーは『大地の加護』を授かった重戦士だ。
身長は2m30cmあり、体重も120kgある超巨体だ。
しかも、こいつはただ脳筋ではなく頭も非常に切れる。
真っ先に敵に飛び掛かっては相手を引きつけ、指示を出すチームの要だ。
顔もシュッとしていてハンサムであり、青い目はあらゆる女を魅了する。
ただ、残念なことにザビエル禿である。
普段は、長身で頭頂部を見ることが叶わないが、しゃがむと気になる。
ハゲというのものは全てを台無しにする。
「シゲオ殿、有象無象はわらわが制圧する。魔王に専念して下さいまし。」
メリッサは『黄金の魔女』の二つ名を冠する魔導士だ。
ちょっとカールのかかったロングの金髪に金色の瞳。
出るところは出て、締まるところは締まっているメリハリがある体。
表情や仕草からは常に妖艶な色気を醸し出している。
魔術の知識量は底なしでアカデミアの学長すら敵わない。
その上、時には呪術すら使用する。
呪歌『セイズ』を歌う彼女の妖艶な姿は魔物すら虜にする。
俺も彼女になら呪い殺されても構わない。むしろ呪ってくれと思うほどだ。
いや、すでに彼女には恋の呪いをかけられているのかもしれない。
「シゲオさん。思い切りやっちゃって下さい。どんな傷でも私がすぐに癒します。」
マリアンヌは聖女であり、この国の5大聖女の筆頭となった。
ストレートのミディアムな赤髪に、緑色の瞳。
背はちっちゃめでアレキサンダーの臍辺りに頭がくる。
胸の膨らみはやや小さめだが、小動物のような愛らしさがある。
癒しの魔力はどんな傷や毒でも一瞬で浄化する力を持つ。
死んで1時間以内なら、ほとんどの場合、蘇生させることすらできる。
彼女の周りにはいつも小鳥たちが舞い、野ウサギが駆け回る。
そして、俺も彼女の周りで卑しく癒され回る。
彼女に浄化された魔王の四天王も改心して、ボランティアに励んでいようだ。
俺も浄化され、彼女に奉仕したいと考えてしまう。
そんな最強メンバーを従える俺もやっぱり最強だ。
頭が眩しい神様から直々に『光の勇者』に選ばれている。
この世界の魔法には、火、水、雷、風、大地の5属性しかない。
しかし、俺はこの世界の常識に当て嵌めることができないようだ。
光属性の魔法と剣術を用いることができる。
光魔法によって強化された肉体は、体操選手もびっくりの身のこなしだ。
その辺の枯れ枝ですら、俺にかかれば光魔法により名刀に変化する。
魔物たちは俺の光魔法を直視することすら叶わず、屠られる。
しかも、自分で言うのもあれだが、俺は見た目も超イケている。
前世は髪が長すぎるため死んでしまった。その反省を活かして、
7色のドレッドヘアーは肩甲骨のところまでで留めている。
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