第85話 95話 ナッツの行方
95話 ナッツの行方
俺は部屋に帰る途中ぶらぶらとしていたのは、腹も減っていたのもあった。
何気に美味しそうな物を露天で売ってたりするから、つい寄り道をしてしまったのだ。
「焼き鳥はどうお兄さん?」
とても可愛い目のした獣人が誘ってきた。
焼き鳥と言ったが確かに日本で売ってる焼き鳥そのものである。
焼き鳥が大好きであった為に、買いたくなる。
この鶏肉独特の香りはたまらないよな。
買うことに決めた。
「じゃあ五本ください」
「はいよ!」
その娘は五本を適当に取った。
小さな恋のメロディ袋に入れて貰う。
美味そうだな。
タレもかけてあるし、焼き鳥のタレと良く似ているからハズレはないだろう。
買ったのを食べた。
涙が出そうになった。
この味は間違いない焼き鳥である。
嬉しかった。
なみだをふき取ると見覚えのある人が、ふと視線に入った。
あれはナッツであった。
先程見たので間違いない。
きっと町をパトロールしているのだろうと思った。
だがよくよく歩く方角を見るとそれはトカチの居住区にあたる。
なぜその方角に行くのかと考えたら、トカチに用があるのかといきついた。
どうも気になった。
騎士団長が盗賊団の団長と会うなんて。
知りたくなったので焼き鳥を一本食べ終えて、ナッツの後を追うことにした。
ナッツは妙に後ろを気にしてた。
それも変に感じられる。
誰にも見られたくないようにも思えるんだよな。
トカチの居住区には入り口に警備の衛兵が立っている。
入り口を通過するには条件がつく。
許可証がいると聞いた。
許可する者しか通さない仕組みだ。
安全さには自信があるそうだ。
思った通りそこで止められた。
「ここから先は行けませんよ」
衛兵は忠告してきた。
不味いな。
何か理由がないと通らせてくれそうにない。
適当な理由でも言っておくか。
後で怖いことになるかもだが。
それ以上にナッツの採った行動の行方を知りたい。
「トカチ様に届け物がある」
超適当な返事をした。
どう考えても無理だろうな。
これで通れたらザルだろが。
なんでも遠るぞ。
「トカチ様にだと。そんなのは聞いてないぞ。どーも怪しい奴だな、獣人ではないようなので、ウチの盗賊団かか?」
「はい、盗賊団に入団しました。トカチ様から、お使いを頼まれたのです。ほれ」
手に持った焼き鳥を見せた。
まだ暖かくタレと肉の甘い香りが衛兵の鼻をついた。
「トカチ様にこの焼き鳥を? これは美味そうな焼き鳥だ。さぞかし高価な肉を使用しているなこれ。トカチ様は鶏肉はお好きだから、それなら通してやる理由もある。まぁそう言うなら仕方ない。通っていいぞ」
「どうもです」
あまりにも適当な理由だが通れた。
肝心なナッツはというと、すでに居住区内に入っていた。
早く入りたいのに手こずったからだ。
俺もついて行こう。
小走りでナッツの後を追いかける。
居住区内では広くさすがは団長と言った住宅であり、ナッツがどこに行ったのか見失っていた。
ウロウロと探していると警備の団員に見られて不審に思われるが、堂々とした態度で乗り切った。
おどおどしてるとかえって怪しまれるのだ。
居住区の家屋の中。
奥にも部屋が幾つもある。
ナッツがどの部屋に向かったのかはわからないし、見当もつかない。
あまり長い時間うろつくのも変で捕まるだろう。
衛兵が警備してるので尋ねてみることにした。
「ナッツ様が来たと思うのですが、この焼き鳥を道に落として行かれたので、渡したい。途中で見失ったのです」
またもいい加減な理由をでっちあげる。
イケるか?
「ナッツ様に……。確かにナッツ様ならここを通られた。落し物として私が届けておこう」
衛兵は差し出すよう要求してきた。
差し出しては意味がない。
俺がここに居てはダメなのにどうしたらごまかせるだろうかな。
「直接ナッツ様に渡したいのです、なんと言っても憧れのナッツ様ですから、お願いしますよ」
「……実は自分も憧れてるんです、国王軍のエリートだからカッコイイすよね。その気持ちわかります、じゃあどうぞ通って下さい。この先の一番奥の部屋に居ます」
「ありがとうございます」
どうやらコイツはナッツに憧れてたいようで助かった。
運が良かったのだけど、警備的には不味いよな。
衛兵の言う通りに行くと部屋はあった。
その中で奥の部屋から声が聞こえてきた。
ナッツの声だ。
間違いない。
「今月の分は用意出来てるだろ」
「もちろんさ、この通りある。確認してくれ」
「……間違いない。100万トパーズある。しかと受け取った。有り難い、これからも宜しくな」
この声は?
俺は部屋に耳を傾けて話し声を聞いた。
声はナッツであるのは先程聞いたからわかった。
もうひとりはトカチだろう。
つまりこの部屋にはナッツとトカチが居る。
そして100万トパーズをナッツが受け取ったと聞こえた。
何の金だろうか。
100万て大金だよな。
トカチが金でも借りていたのを返済したとか。
それは無いか。
どう見ても金には困ってないしな。
「今後は新しい魔石を取りに行く予定もある。その魔石は貴重な魔石らしい。それを手に入れたら闇市で売るつもりだ」
「闇市ね、私がいれば大丈夫さ。次の闇市でも私が管理するから心配はない。好きなだけ魔石から盗品でも売ればいい」
ナッツが言った。
闇市で売ればとは変だな。
本来なら取り締まる側の人間だ。
それが見逃すかのような発言に聴こえる。
「お互い損はないな」
トカチも同意した。
ナッツの言った言葉にびっくりした。
闇市に関した会話であり意外なセリフであった。
話の内容はトカチが魔石や盗品を闇市で売りさばく。
その闇市を管理しているのだろうナッツが見過ごしてトカチは潤うわけだ。
つまりさっきの100万トパーズは見過ごしもらう為の金。
賄賂って奴だ。
女の子を助けたから、つい良い奴だと決めつけてしまったのが間違い。
飛んでもない悪党な騎士団長だな。
トカチの素性を知ってての事だけにもっと酷いかもだ。
「気になったこともあってな。町で冒険者に会った。見慣れない奴で今日団員になったと言ってた。そいつがターヤから来ていて、ターヤで闇市を取り締まっていると偶然聞いた。よその町の事は意外と情報は入って来ないものだ。チュトルが動いてるとかで面倒な奴だから気を付けたい」
「今日団員に? あの冒険者か。ブロンズの騎士団を付けてなかったか」
「付けていた。ブロンズだったのは覚えている。まぁチュトルは見ただけで繋がりがあるわけでは無さそうだから問題ないだろう」
「念には念を入れて、明日にもヨールに始末させよう」
なんと俺を明日にも殺す予定だそうだ。
容しゃないやり方だ。
話を聞いて正解だった。
知らなければヨールに始末されてるなんて、一刻も早くクノの町から退散しよう。
死ぬのを待ってるなんて嫌だから。
そこへ警備の団員が通りかかる。
何か会話していた。
俺は隠れて話の内容を聞いた。
「チユは牢獄でどうしてるかな」
「なんだお前さんチユに興味ありかよ」
「ああ、なんてたってあの胸だ。そりゃ一回くらい触ってみたいもんだ」
「まぁな、飯を持っていくついでに少し触ってやろうぜ」
「そりゃいい」
この二人はチユの所に行くようだ。
しかも牢獄とは!
全く酷いことしやがる。
それに触ってやろうだと!
そんなことさせてやるつもりは無いし、許せないな。
後をついて行くことにした。
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