第83話 93話 ナッツ騎士団長
93話 ナッツ騎士団長
カフェを出ると通りでまだ小さな女の子がオレンジを運んでいた。
籠に入れて両手で持ってはいるが、かなり重そうである。
手伝ってあげたいが、その監視には団員がいて目を光らせているので近づき難い。
その時に女の子がオレンジを持つ手を離してしまい、籠からオレンジがばら撒かれてしまったのだ。
「きさま、何をしてる! 早く拾えっ」
「すみません、すぐに拾います」
女の子は慌てて道に落ちたオレンジを拾い集める。
それでもコロコロと転がってしまい、全部を集めきれないで困っていた。
「大切なオレンジを落としやがってこの野郎!」
団員が失態をしたのが気に入らなかったのか女の子を蹴り飛ばした。
酷いと俺は怒りが湧いた。
この団員、ムカつくな。
でも俺が手を出してこの団員をボコったらどうなるか。
確実に俺は敵視されちゃうだろう。
今は大人しくしていたいのだ。
本当に済まないが、大きな事は起こしたくない。
でも女の子は飛ばされて動けないくらい痛みを負っていた。
「さぁ立てっ」
動けないところをまたも蹴りを食らわしたのだ。
「うっ……」
女の子は痛がる。
さすがに俺にも我慢の限界がある。
我慢していたが見ていられなくなり、団員を斬りつけようと剣を作ろうとした。
その時に俺の前に現れた男がいた。
誰だろうか。
「もうその辺で止めておきなさい」
「なんだと、てめぇ!」
団員は止められて腹が立ったのか食いかかった。
しかしそれも相手を見るや気が変わる。
「あっ、ナッツ騎士団長さんでしたか。や、止めます」
団員は急に驚いた様子で蹴るのを止めた。
なぜだろうか。
トカチ盗賊団の者なら怯える必要ないと思うが。
「もう大丈夫だよ、立てるかい?」
その男は女の子に優しく声をかけた。
「立てます」
女の子は立ってオレンジを拾い集める。
痛がってはいるが、助けてくれて感謝をしていた。
良かったな、俺が出て行かなくても大丈夫そうだ。
「全部拾ったから蹴る必要は無いですよね」
「は、はい……無いです」
団員は恐ろしさを感じたように言った。
ナッツ騎士団長って言ってたけど、チュトルと同じなのかな。
女の子はお礼をして行ってしまった。
とにかくこのナッツて人は良い人のようだ。
女の子を救ったのを見て俺はちょっと感激していた。
近くに行って話しかけることにした。
きっと話しをきいてくれるだろう。
「す、すみません。今の助けたのを見てたのですが騎士団長て言われてました。騎士団長ならチュトルさんと同じですかね?」
「君は?」
「俺は進と言います。ターヤにいた時に見たことありまして」
「ああチュトルなら仲間であり同じ騎士団長さ。ただし彼はターヤ地区で私はクノの町地区を担当している。まぁいいライバルでもあるかな」
やはり同じ仲間であった。
チュトルとライバル。
それなら団員が怖がる理由にも納得する。
「今のはめっちゃ感動しました。カッコよかったです」
「どうもありがとう。進も団員かい?」
チュトルと同じ騎士団長てことは同じ位の力を持っていると。
すると力は相当な物だ。
行っしまった団員がビビるのは当然だろう。
ただしクノの町を担当しているならトカチのことも知ってるはずだ。
トカチを監視しているのも騎士団長としての仕事なのかもな。
名のある盗賊団が陣取っている町なのだが、混乱していないところをみるとナッツさんの力で押さえつけているとも考えられる。
「はい、入団したての新人です」
「そうかい、なら言っておこう。私は相手が盗賊団だろうと、か弱い人の見方だよ」
「俺も見習います」
こんなセリフを言って見たいものだと騎士団長に憧れる。
俺も活躍次第では将来国王軍に入団なんてこともあるかと思ったりした。
「チュトルとは騎士団に入りたての頃から競い合う仲でな、あいつは見習いの時はよく一緒に訓練をしたものだ。最近は会ってなかったけど元気だったかな?」
「ええ、闇市を取り締まってました。もの凄い強さに圧倒されまして」
「アイツは強いからな。今度あったらよろしく言っておいてくれ」
「そうします」
ナッツ騎士団長は話し終えると行ってしまった。
昔からの知り合いらしい。
俺も部屋に戻るとしよう。
部屋に戻ることにしたが、結局はシュナリとチユの居場所までは特定できなかった。
町の人にきいても、たぶんわからないだろうな。
手がかりが何もない状態で探すのは大変であった。
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