第34話 目覚め
目を開けると、そこには見慣れた天蓋付きベッドの天井が見えた。
どうやらいつもの私の部屋みたい。
さっきまでの事は夢だったのかしら?
そう思っていると部屋の扉が開いてドヤドヤと人が入って来る足音が聞こえた。
「アリス、大丈夫か?」
真っ先に私の顔を覗き込んで来たのはお父様で、そのお父様を半ば押しのけるようにお兄様も顔を見せる。
「アリス、気分が悪いと言う事はないか?」
二人共青褪めた顔で私を覗き込んでいるが、心配されている私よりお父様達の方がよほど病人のように見える。
「…気分が悪くはありませんが、お二人共どうされたのですか?」
不思議に思って尋ねるとお父様達は揃って大きなため息をついた。
「アリス、覚えていないのか? お前はもう三日も眠ったままだったんだよ」
…三日も?
それじゃ、私がグレンダさんに攫われたのは夢でも何でもなかったの?
「医者の見立てだと魔力枯渇に陥っていたらしい。一体あそこで何があったんだ? エイブラムは未だに目が覚めないし…」
お兄様の言葉に私はカバっと体を起こしたが、途端にクラリと目眩を起こしてそのまま前のめりに突っ伏した。
「アリス様、まだ無理をされてはいけません」
すぐ脇に控えていたセアラが私の体を横たえて布団をかけ直してくれた。
いつもと変わらないセアラの姿を見れて何故かホッとした。
「ありがとう、セアラ」
私がお礼を言うとセアラは何故かぎこちない笑みを返した。
セアラの態度に釈然としない思いを抱きつつ、私はお父様達に目を移す。
「あの日、グレンダさんに貸して頂いた本を読んでいるとページが引っ付いた箇所があったんです。そのページを剥がして開いた途端、眩い光が放たれて気が付いたらあの部屋にいました」
グレンダさんの名前を出しても驚いていないところを見ると、二人共グレンダさんが関わっている事は知っているのね。
「出口が開かなくて座り込んでいると、グレンダさんがエイブラム様を伴って部屋に入って来ました。エイブラム様は様子がおかしかったので、グレンダさんに何か術をかけられていたのかもしれません。グレンダさんは何故か私を敵対視していてエイブラム様に私を殺すように命じていました。エイブラム様が剣を振りかぶったところで叫んだら爆発音が起きて…。後の事は覚えていません」
そこまで話すとお父様はそっと私の頭に手をやった。
「アリス、済まない。私があの女を処刑した時、もっと慎重になるべきだったのだ」
どうしてお父様が謝るのかわからずに目を瞬いていると、お父様は過去の話をしてくれた。
亡くなったお母様にライバル心を燃やしていた女性をいた事。
お母様が亡くなった後でお父様に婚姻を迫り媚薬を盛ろうとして処刑された事。
その際に不可解な事を口走っていたのに、碌な調査もせずその女性を処刑した事。
その後のお父様の言葉は更に私を衝撃の渦の中に叩き落とした。
「あの女、コーデリアはグレンダと魂を入れ替えていたのだ」
え?
魂を入れ換える?
そんな事出来るの?
あまりにも話が荒唐無稽過ぎてにわかには信じられない。
だけど、グレンダさんがそのコーデリアと言う女性だとすれば、あの時の彼女の言葉にも納得がいく。
「グレンダは既に拘束してある。まだ取り調べの最中だが、いずれは処刑されるだろう」
魂を入れ替えてまでお父様に固執していたなんて…
それだけ思いを寄せていたのに受け入れて貰えなかったなんて、コーデリアさんが少し可哀想になってくる。
「…それで、エイブラム様は?」
「あいつもどうやらグレンダに操られていたみたいだな。まだ目覚めないところを見るとかけられた魔術が解けていないのだろう」
私に刃を向けたという事で何かしらの処罰は下るだろう。
だけど、未だに目覚めないのは心配だ。
「お父様、お兄様。私をエイブラム様の所へ連れて行ってください」
お父様とお兄様は少し渋っていたが、自分達が同席することを条件に面会を許してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます