Secret-Lilium《短編フェス応募作3》

亜夷舞モコ/えず

Secret-Lilium

 秘密は穴に隠すしかない。

 掘り返した穴に、隠すしかない。

 裏庭に掘った穴に、言葉を吐き出す。

「僕は、■■■■■■■■」

 誰にも知られないように、穴の中に言葉を零した。そして、そのまま穴の中に封じてしまう。僕は本当に自分がなんて言ったのかを思い出せない。

 秘密を隠してしまった僕は、まるで自由になったように思えて、まるで無敵になったように思えて、この世のすべてを得たかのように思えた。僕は隠して無くしてしまったのに。

 何かを捨てて、僕は何かを得た。

 何を捨てて、何を得たのかもわからぬまま。

「あなたを■■します」

 僕の手に、■■がはめられて、■■■■に乗せられる。激しいフラッシュの中、外に連れ出されて、僕は何かにされたらしい。「■■■■■■を■■■■件について知っていることはありますか?」「今、なんておっしゃいましたか?」「えっと、■■■■のこと、知っていることはありますか?」「いえ、本当に何もわかりません……あなたがなんて言っているかすら分からなくて」「何を言っているんです!」「そんなに叫ばなくても――」「あなたは、■■■■を■したんですよ?」

 分からない。

 何も、分からないのに。

 

 彼の家の裏庭に、そっと咲いた百合の花。

 白い百合と黒い百合が、ひっそりと咲いた。

 花は、そっと呟いた。

「僕は彼女を殺しました」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Secret-Lilium《短編フェス応募作3》 亜夷舞モコ/えず @ezu_yoryo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ