あの白球を支配しろ!

ニート大帝

プロローグ~転生して第二の人生へ~

(何ここ? 雲の上?)


俺は死んでしまった。ある日酔った勢いで階段を降り、そして足が滑って頭から落ちて首を折った。一瞬激痛が走り、その後視界が暗くなって全ての感覚が失われた。そして次に意識が目覚めるとここにいた。雲の上と思わしき場所にいるかと思えば、俺の目の前にモヤのようにふわふわした存在が列をなしていた。もちろん、俺も列に並んでいるようであった。


(身体が自由に動かせないけど、前が進むと自動的に進むようになっている・・・)


俺は流れに身を任せ、列に並んだ。一定間隔で列が進んでくと、俺の目の前にテントのようなものが現れた。モヤ達はそこに吸い込まれるように入っていった。


(何が行われているんだ? というか、俺ってどうなるの?)


手足を動かせる感覚が無いことから恐らく俺もモヤになっているのだろう。なんとなく死んだという感覚があるが、ここが天国だとも思わなかった。まさか地獄かとも思ったが、イメージしているものとはかけ離れているため、それも除外した。そんなことを考えていると俺がテントに入る順番になり、入出した。


「はーい。次の方ね。簡単に説明すると、あなたは死にました。ですが、今天界のキャンペーン中でこのガチャを引いて見事当たりを引けば、転生するチャンスをあげます。あっもちろん、転生先はあなたが死んだ世界とあまり変わらない世界です。じゃ、引いてください。引きたいと思えば、引けますから」


背中から羽の生やした男性とも女性とも取れる存在、仮に天使と名付けた存在からガチャを引けと言われた。俺は拒否権が無いのでガチャを引いてみた。すると、虹色の球がガチャから出現した。


「はーい、し・・・え!?」


天使はガチャの結果を見て驚いていた。どう見ても白ではない。七色に光り輝いている球だった。もしかしなくても当たりだと俺は思った。


「まさか本当にあたりを引く人物がいるとは・・・あんた豪運だな! よし、奥のテントに向かってくれ!」


天使はカウンターの入り口を開け、俺に奥の扉に進めと指示した。俺の身体は勝手に進み、奥の扉を開いて先へと進んだ。するとそこにもカウンターの上に置いてあるガチャが見えた。


「ほう、あんた当たりを引いたのか! すごいな! よし、この調子でチートガチャでも当たりを引けよ!」


二人目の天使の説明いわく、このガチャは転生した場合に送られる特典、いわゆるチートを授けてくれる場所だった。


「あんたが死んだ世界は・・・地球の日本か。あそこは確か、キリなんとかという宗教の奴が転生した世界だったか。だったら戦闘系のチートをもらってもしかたないな。日常を楽しく過ごせるチートを願いな!」


そう言われて俺はガチャを回す。すると出た玉には番号が書かれており、89番だった。


「89番ね。えーと・・・おっ! いいんじゃねぇか! お前の特典は【野球】だ。この野球という特典はな、その名の通りで野球に関することがとてつもなく上手くなることだ。転生したら野球でも始めればいいさ。じゃあ、転生させるぞ。ちなみにお前の世界の転生者はお前だけになるから、むやみに転生したなんて言わないほうがいいからな!」


天使がそう言うと俺の足元に魔法陣が出現した。魔法陣の光りが俺の視界を塞いだ瞬間俺の意識は遠のいていった。


■■


「おめでとうございます! 元気な男の子です!」


次に意識を取り戻した時、俺は女性に抱えられていた。どうやら俺は本当に転生したらしい。


(マジで転生なんてあるんだな・・・)


俺は恥ずかしかったが、鳴き声を一応上げた。俺は仕方ないので、これからの第二の人生に向けて頑張ろうと思った。

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